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任天堂「あえての技術劣化」が業界に与えた好循環 ゲーム業界が「30兆円市場」に成長できた訳

東洋経済オンライン / 2024年7月2日 11時0分

「あえての技術劣化」という「差別化」に舵を切った任天堂が、業界にあたえた影響とはどのようなものだったのでしょうか(写真:すとらいぷ/PIXTA)

「Wii」と「ニンテンドーDS」がなければ、ゲーム業界の30兆円市場は存在しなかったかもしれないとすら思います。そう語るのは、エンタメ社会学者の中山淳雄氏だ。

北米の会社との差がつきすぎてしまい、「あえての技術劣化」という「差別化」に舵を切った任天堂が業界にあたえた影響とはどのようなものだったのか、前編に引き続き中山氏に話を聞いた。

日本のゲームは劣化していった?

日本では、PCゲームはコアな人がやっているようなイメージがありますが、海外ではそうでもありません。日本は、任天堂やソニーの家庭用ゲームが強すぎたせいもあり、近年の潮流になっているネットワークと共同性に優れたPCベースのゲーム開発が欧米や中国、韓国よりも遅れています。

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ゲームのトレンドは、2000年~2010年頃には、マルチプレイやPCベースで多人数対戦するようなものへと移っていきましたが、日本企業は、家庭用ゲームの市場が大きすぎたために、そこに乗れませんでした。

実は、任天堂が「Wii」や「ニンテンドーDS」を出した後、日本のゲームはある意味“劣化していった”経緯もあります。PS2や3などハードの性能があがりすぎて、巨額の開発費がかかるようになるなかで、簡単に遊べて、テクノロジー的には大きなチャレンジをしないもの、という方向に舵を切ったのです。

「枯れた技術の水平展開」と言われ、技術進化にあえてキャッチアップせずにアイデアで勝負したDS時代に国内のゲーム市場は豊かになったものの、世界の誰が見てもわかりやすくすごい、という大作が生まれにくくなったのも2010年前後以降の動きです。

「Xbox」や「プレイステーション」は、映像が映画のような世界になっていき、どんどんリッチですごいものを作ってエスタブリッシュしていく。一方の任天堂は、ハードウェアの性能では追いつくことができない。

そこで任天堂は、差別化をはかりました。ファミリー向けに舵を切り、「みんなと遊ぶ」というインスパイアリングに優れた遊び方の提案をしたわけです。玩具屋としての発想で、遊ぶシーンを想像しながら、面白いゲームを作っていった。DSに続いてSwitchもそうした機種でした。

任天堂のゲームは、フレンドリーですよね。画像も荒いし、ちょっと古めのゲームも多いのですが、やっぱり「遊び」に近い。玩具のように、手に取って直感的にわかるようなすごさがあります。そのような手触り感のあるものを作るというところに、僕は、任天堂のすり合わせ技術(前編を参照)の粋たるものを見る思いです。

任天堂はゲーム人口をもう一度掘り起こした

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