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ゴーストタウン化させない「小樽」の"生き残り策" 観光都市から「健康で長く暮らせる街」へと進化

東洋経済オンライン / 2024年7月2日 10時30分

ウイングベイ小樽にある発達支援事業所「きっずてらす」。保育園留学制度を利用した筆者一家も、お世話になった(写真:筆者撮影)

かつては港湾都市として、そして今は観光都市として人気の北海道小樽市は今、観光都市から「ウエルネスタウン」へと大きく舵を切っている。

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ウエルネスタウンとは、「高齢になっても、その地域で元気よく暮らし続けることができる」都市作りのことで、小樽市はこう呼ぶ。

興味深いのは、構想の主導が「行政」ではなく、民間の、それも「社会福祉法人」である点だろう。同構想を牽引する北海道済生会常務理事の櫛引久丸(くしびき・ひさまる)氏を取材、筆者一家も体験した「保育園留学」について紹介する。

港湾都市から観光都市へ

小樽市内で毎日運行する名物・小樽運河クルーズでは、船頭がこんなアナウンスをする。「かつては、札幌よりも小樽のほうが栄えていたのです。そう言うと驚くかもしれませんね」。

【写真】観光としてして名高い小樽市だが、実は今「人口減」の悩みを抱えている。そんな小樽市の生き残り策とは(14枚)

時代は移り変わり、港湾都市としての機能が衰退した昭和後期を経て、小樽市は観光客が年間800万人ほど訪れる観光都市として変化を遂げた。

一方で、居住者は坂を転げ落ちるかのように減少。1964年に20万人近くいた住民は、2024年には約半分となり、高齢者が増加。そこで上がった問題は、居住者の健康維持だった。

高齢者の生活をはばむ雪と坂

小樽は急傾斜地にある“坂の町”。高齢者には住みやすい環境ではない。おまけに豪雪地帯だ。雪深い冬は、徒歩はおろか、車での坂道も警戒しないとならない。

「高齢者が容易に生活できる環境ではないですよね。本当は自力で生活できるはずのお年寄りが引きこもって、介護の等級も上がり、体調も悪くなっていくのをただただ見守るのは、胸が苦しくなります」

これは、往診した際に櫛引氏が高齢の患者を目の当たりにした際の回顧だ。大幅に増える在宅高齢者に対して、スタッフ数は対応できる人数までは容易に増えないため、1人当たりの受け持ち患者の数が増える。

とはいえ、1日で往診できる数には限界がある。ゆえに医師が容易に回診できないという現状ももどかしかった。

高齢者の子ども世帯の多くは札幌市内に転居している。残された親世代も、子世帯とともに転出するケースも少なくない。

ある日のこと。リハビリテーション技師だった櫛引氏がリハビリ担当をしていた80代男性、Sさんはこう吐露した。

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