「ペイディの黒字決算」ではみえないBNPLの苦難 ジャックスは事業撤退、軌道修正を図る動きも
東洋経済オンライン / 2024年7月4日 8時50分
「BNPL事業者は多額のお金を投資していながら、まったく儲かっていない」
ある決済事業会社の関係者がこう漏らすように、後払いサービス「BNPL」事業者の収益性をめぐる厳しい状況が明らかになりつつある。
日本でBNPLが一躍有名になったのは3年前の2021年。アメリカの大手決済会社のペイパルが、日本でBNPL事業を展開するPaidy(ペイディ)を3000億円で買収したことが発端だった。海外企業による日本企業の買収額として、当時の最高額だったことでも話題を集めた。
「実ビジネス」とは異なる売り上げ
「決算書を見ると黒字だが、これが本当の姿なのだろうか」。決済ビジネスに精通する有識者は、ペイディが公表する決算書をにらみながら話す。
決算書によると、2023年12月期の純利益は5億6100万円の黒字。営業収益(売上高)は約257億円で、営業利益は約6億円の黒字だった。
ペイディの杉江陸社長を取材した。決算について尋ねると、「そこ(決算書)にある売り上げは必ずしもわれわれが『本当の売り上げ』と認識しているものではない。いわゆる実ビジネスの売り上げと、そこに出ている売り上げが100%リンクしているとは限らない」と言う。
実はペイディの営業収益には、親会社ペイパルからの「支援」が含まれている。決算書の数字だけではビジネスの真の実態をうかがうことはできない。
ペイパルは「ディストリビューション・サービス・アグリーメント」と「システム・デベロップメント・アグリーメント」という2つの契約の基、ペイディに営業面やシステム面での支援を行っている。ペイパルからのこうした支援が営業収益に含まれているようだ。
決算書では2023年12月期の営業収益が前年度比で1.5倍になった。大幅な増収によって251億円の営業費用を吸収し黒字化した格好だ。しかし支援を除いた「実ビジネス」の売り上げをベースにすると、数十億円の赤字になっているとみられる。
資金調達や加盟店への保証も支援
営業費用の低減という点でもペイパルによる支援効果は絶大だ。
ペイディは2023年12月末時点で1400億円もの借入金がある。これはペイディが銀行や資本市場から直接調達したものではない。ペイパルからの貸し出しだ。
ペイパルはこの資金を2つの手段で調達している。1つは、みずほ銀行をアレンジャーとするアメリカでのシンジケートローン(協調融資)、もう1つは2023年に発行したサムライ債(円建て債券)だ。
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