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「ボーナスがやる気を引き出す」と考える人の誤解 「外発的動機付け」が抱える深刻な問題とは

東洋経済オンライン / 2024年7月5日 11時0分

ある実験では、参加者にエクササイズや読書といった前向きになれる活動をしてもらった。

そしてそのうちの半数には、それぞれの成果(歩いた距離や読み終えたページ数)を数字で伝え、残りの半数には何も伝えなかった。最後に参加者の成績と意欲のレベル、そして幸福度を計測し、さらに実験が終わった後も参加者がその活動を続けたいと思うかどうかも調べた。

では、どんなことがわかったのだろうか?

他の多くの実験と同じように、自分自身の行動を監視して数値化するというこのやり方をすると、わずかに実績が上がった。自分の成果がわかる数字を知らされていた参加者は、少しだけ速く、少しだけ長く歩き、少しだけ多くのページを読んだ。

ところが意欲は薄れていき、実験が終わった後も活動を続けたい人は減ってしまった。

自己定量化をしていると、時がたつにつれて好きだと思う気持ちが弱まり、その活動を行なう時間が短くなっていく。

また、自分の成績を記録していた人たちの満足度と幸福度は、まったく同じ活動をして計測と数値化をしなかった人たちより低かった。

その結果は、エトキンが参加者に自己定量化を強制的に指示した場合も、参加者が自発的に自己定量化を選んだ場合も、同じだった。

そうなる理由を考えてみよう。

計測していると、私たちは自分が計測していることに、より大きな注意を向けるようになる。歩数を数えているなら歩数が気になる。ページ数を数えているなら何ページ読んだかを確かめる。

そして自分ではもっと遠くまで、あるいはもっと速く歩きたいと意識しなくても、調査の結果からは計測によって成績が上がることがわかっている。

ジョギング中に心拍数、速度、距離を計測していると、最初にジョギングをしたいと思った理由よりも、少しずつそれらの数字に注目するようになっていく。

計測値および外発的動機付けに注目が移っていくために、かつては前向きな楽しい活動としてはじめたのに、楽しさより役に立つからという気持ちが強まる。

新鮮な空気を吸い、好きな音楽を聴きながら自然を体で感じるのが好きでジョギングをはじめた人も、フィットビットやストラバにつながったとたん、その内発的動機付けは少しずつ実績、効果、外発的動機付けに置き換わってしまう。

子どもを対象とした愉快な同様の研究も、この結果を裏付けている。

たとえば未就学児に、ニンジンを食べると数を数えるのが上手になるからニンジンを食べなければいけないと言うと、他の子どもよりニンジンを食べる量が減り、味もまずいと思ってしまう。子どもが絵を描いたからと、ご褒美を与えると、その子どもはまもなく絵を描くのに飽きてしまう。

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