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「ボーナスがやる気を引き出す」と考える人の誤解 「外発的動機付け」が抱える深刻な問題とは

東洋経済オンライン / 2024年7月5日 11時0分

自分自身を自主的に計測して監視する場合にも、他者によって定量化され計測される場合にも、同じように当てはまる。

まずエトキンは簡潔に、自己定量化は実績を短期間だけ伸ばす場合があるとしても、計測によってやる気と意志がまたたく間に薄れていく可能性があることを指摘した。

またもうひとつの明確な副作用として、過度に自己執着的になり、場合によっては自己陶酔と言えるほどになる場合もある。

3つ目の予期せぬ副作用は、計測が可能なものに自分の行動を合わせてしまうことだ。

たとえば、自分がもっているアプリが特定のエクササイズについてはカロリーや歩数をカウントできないと、ただそのエクササイズをやらずにすませてしまう。さもなければ、計算の結果が間違ったものや不完全なものになるだろう。

これは企業や組織ではよく知られた問題で、中でも報酬制度と主要指標についてはそう言える。従業員は自主的に、計測されて報酬の対象となるものを優先させて行動し、その他の、たいていの場合はとても重要な任務については、優先順位を低くしてしまう。

関連する副作用として、計測は不正行為と自己欺瞞を引き起こすこともある。

たとえば、アプリでカウントされる歩数を増やすためにスマートフォンを手で振ったり、カロリーを計算するときにケチャップを野菜としてカウントしたりと、あらゆる場面が考えられるだろう。ケチャップはどっちみち、ほとんどトマトでできているというわけだ。

人生の喜びが消えていく

計測によるとても一般的な、また別の副作用は、数字の間違いや不正確さを疑うべきときにも数字に頼ってしまうことだ。その結果、実績を伸ばすはずのものが、まったく反対になる。

たとえば、使用している睡眠アプリの数値が睡眠不足を示していると、疲労感が増し、日中の気分が悪化してしまう――アプリの数値に誤りがあり、実際にはぐっすり眠っていたとしても関係ない。

計測が引き起こす可能性のある意図せざる副作用として、自分が選んで計測している点について、結果を少しでもよくしようと夢中になりすぎることが挙げられる。

もし自分の体重とカロリー摂取量をチェックしているなら、過剰なダイエットのリスクがあるだけでなく、人生の喜びがカロリーとともに消えていくという残念な可能性もある。

(翻訳:西田美緒子)

ミカエル・ダレーン:ストックホルム商科大学教授

ヘルゲ・トルビョルンセン:ノルウェー経済高等学院(NHH)教授

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