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「ボーナスがやる気を引き出す」と考える人の誤解 「外発的動機付け」が抱える深刻な問題とは

東洋経済オンライン / 2024年7月5日 11時0分

内発的動機付けではなく外発的動機付けに基づいた活動は、魅力に欠け、楽しみも薄れる。

ニンジンを食べるのは退屈、ジョギングは課題、本を読むのは努力に変わってしまうのだ。

ボーナスなどの「ご褒美」が裏目に出る

私たち人間はよく外発的動機付けを利用して、他の人の実績を高めようとする。

親は子どもに褒美としてアイスクリームとチョコレートを与え、会社は給料とボーナスで社員にやる気を出させる。このやり方は、少なくとも短期間なら、ときには効果を発揮することもある。

ところがすでに見てきたように、外発的動機付けは私たちの心の中の動機付けを、あっという間に使い尽くしてしまうのだ。自分が大好きなことをやっても、金銭を受け取っていると、まもなく負担を感じるようになる。

エトキンの研究は、金銭と意欲をテーマとしたあらゆる研究を思わせる。ただしここでは、外発的動機付けの要因は金銭ではなく、歩数、「いいね」の数、閲覧数などになる。

金銭をもらうと、やる気が起きてもすぐその活動が面倒になってしまうのは、時がたつにつれて自分の努力が心の中の意欲ではなく、報酬と結びつくようになるからだ。

同じように、自分自身について数を数えるようになると――平均歩行速度、歩数、「いいね」の数、ボーナスポイントのどれであっても――少しずつ自分の心の中から意欲が消えてしまうことがある。

計測や定量化の重大な副作用

社会、企業、組織が機能していくためには計測と定量化が必須だという考えは、よく理解できるものだ。

ただここで、「それが役に立たなくなるのはいつなのか」という、興味深い疑問がわいてくる。数字が実績を向上させる存在から実績を低下させる方向に変わるのは、いつなのだろうか?

何人かの研究者がこのことに目を向けはじめており、その一部は企業による計測システムとボーナスの利用に注目している。

そうした研究によれば、金銭的なボーナスはあまり大きいとは言えない短期的な効果しか上げず、実際のところ、ボーナスは目的を妨げている可能性もある。

それらの研究の結果は、ジョーダン・エトキンの自己定量化の研究とよく似ており、(ボーナスという形式の)外発的動機付けは、時を経るにつれて内発的動機付けを弱め、ボーナスの目的――と効果――を台無しにしてしまう可能性があるということだ。

計測と定量化がもつその他の――何と言うのが正しいかはわからないが、あえて言うなら――「予期せぬ副作用」をいくつか挙げていくのは、それほど難しいことではない。

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