1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

「AIの存在におびえる人」は自分の価値を再考せよ 「人に必要とされないと嫌」思考がもたらす問題

東洋経済オンライン / 2024年7月5日 20時0分

落合:いまの格差より、もっとタチの悪い格差になるかもしれません。

暦本:そう考えると、知能の分布がベルカーブを描くというのも、じつはまやかしなのかもしれない。何もテクノロジーを使わない生身の人間なら、身長と同じように知能も正規分布するはずだけど、そこにテクノロジーが関わると現実には格差が生じる。実際、収入は正規分布せず、べき分布※2になりますからね。

※2 べき分布 身長、体重、学業成績といった、自然界の現象や人間の行動などの多くは、分布グラフが平均値を中心として左右対称のベルカーブを描く。これを「正規分布」という。しかし、それとはまったく異なり、べき乗則にしたがう(左端がピークで右に行くほど減っていく)分布となる現象も少なくない。19世紀終盤に「80:20の法則」で知られるイタリアのヴィルフレド・パレートが収入分布の研究を通して発見したその分布パターンを「べき分布」という。地震の大きさと頻度、ネットワークのリンク数なども、べき分布することが知られている。

落合:収入の少ない人が大勢いて、収入が多いほど人数が減る。グラフにすると、左端がピークで、右下がりのロングテールになりますね。

暦本:生身のIQは正規分布するにもかかわらず、そのパフォーマンスの結果としての収入は、べき分布。だから、すでにそこには格差があるんでしょうね。農業だけの時代ならそうはならないけど、資本やテクノロジーが介在する社会では、差が極端に積み上がってしまう。これからは、AIとうまくつきあえるかどうかで、ますます差は広がるような気がします。

落合:AIを警戒する人が絶えないのは前から不思議だったんですけど、去年、東浩紀(あずまひろき)さんと対談したときに、その問題が発生する理由がわかってきたんです。「人間」という言葉を口にする回数が多い人ほど、テクノフォビアみたいになるんじゃないかと思うんですよ。

みんな「人間、人間」というでしょ? でも、なんで人間とAIを比べているのかが、そもそもよくわからない。

暦本:たぶん、自分が他者や社会に必要とされることが重要なんでしょう。「AIがあればおまえは必要ない」といわれることに耐えられない。必要とされないと、生きている意味が感じられないと思っているんじゃないだろうか。

落合:そうなんですかね。まあ、たしかに西洋哲学は「人間」が好きだし、「必要」という概念も重視するけど。

暦本:東洋思想は? 荘子(そうし)※3とかは、そうでもないですよね。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください