1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

サハリン島「ギネス級に親切」おじさんと北の果て 稚内からフェリーで5時間半、さらに1000キロ

東洋経済オンライン / 2024年7月5日 17時0分

諸条件を満たせば楽園に昇格するのだから、マイ秘境探しはミッションでもある。などと、くどくどと屁理屈を並べるまでもなく、サハリン島は全体が秘境だった。

食堂で出会った世界一親切なおじさん

町を外れると人の気配がなくなり、ほぼ無人島。景色的にはさほどの特徴はないけれど、無人島と思えば見るもの触るものすべてが味わい深い。廃墟を覆う雑草は地球が滅亡したかのように猛々しく美しい。

加えて、世界一親切な人物に出会ったのである。

夕方、「注文の多い料理店」みたいな隠れ家的食堂を見つけた。店にいたおじさんに、

「この辺に駐車場はないですかね? 車中泊をしたいんだけど」と訊いてみた。

「駐車場? ないねー。ホテルじゃダメかい?」「ホテルは高いから」「じゃ、キャンプ場は?」「え、キャンプ場があるの?」「あるよ」ついて来なと言うので、おじさんの車について行った。それがむちゃくちゃ遠かった。砂利道になっても突っ走った。日が暮れても止まらない。もしかして誘拐されてる?とYukoが心配するから、こっそり止まってみた。闇夜に消えたおじさんの車はほどなく戻ってきて、しっかり付いて来いよと怒られた。1回の休憩もなく走るに走った。着いたぞっておじさんが言ったのは、2時間半後! その距離140キロ。たかが道案内で2時間半の140キロ。すごくね?

東京の新宿で道を尋ねたら、静岡県の富士宮市に案内された親切具合だ。ついぞ日本でそんな親切な人に会ったことがない。恐ろしく迷惑な道案内だった。

おじさんっ、ありがとう! かたく握手をした。おじさんの親切はギネス級です。絶対に道案内の世界記録です。このご恩は一生忘れません。でも、ここってキャンプ場じゃなくてホテルじゃんって言ったら、ちょっと怒っていた。

その夜は、ホテルの近くの雑居ビルの駐車場で寝た。翌日の午後、最北端の町オハにたどり着いた。

発電所の煙がそのまま雲となって重くのしかかった、悪霊が取り憑いたような陰気な町だ。この日も適当な駐車場をみつけられず、町外れの廃工場で車中泊した。

あんた、本当はクマじゃないの?ってくらい巨大な犬が、狂ったように吠えていた。

ついに到着したサハリン島の北の果て

翌朝は早起きして、いよいよ最北端へ。お誂え向きの濃い霧のなか、町を抜け出た。道路標識がなくなり車も消えた。鳥も飛んでいない。動くものがないから音もしない。

謎めいて見えなくもない背の低い森をふたつみっつ分けいった。道がくねくねと曲がり、ぐっと狭くなったと思った矢先、前に進めなくなったのである。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください