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トヨタ「価格競争に突入」で懸念される先行き BYD対抗セールを実施するも厳しい中国事業

東洋経済オンライン / 2024年7月5日 10時30分

こうした値下げ戦略は、短期的には販売台数の維持につながるだろう。しかし、トヨタには2つの懸念が潜む。

1つ目は、収益への影響だ。トヨタの中国現地法人の営業利益は、2023年度に前年度比0.5%増(1956億円)にとどまり、伸びの鈍化が見られている。

販売費の増加により、中国事業への投資損益(2689億円)は、前年度比で356億円減少。合弁メーカーの工場稼働率を見ると、広汽トヨタは2022年の113%に対して、2024年1~5月は70%へと低下しており、一汽トヨタの同80%から60%にとどまっている。

今後、高級車を含む欧米系エンジン車、地場系PHEVが中型車の値引き攻勢をかけていくとなれば、トヨタの収益に影響を与えると考えられる。

実際、広汽トヨタは10代目のビッグマイナーチェンジ版となる新型カムリの値下げを行ったが、2024年1~5月の販売台数は、前年比3割減だ。

ドル箱であるカムリの販売台数を維持するため、さらなる値下げを実施するとなれば、広汽トヨタの収益低下の懸念が現実となるだろう。

2つ目は、中古車市場での変化だ。競合ブランドと比べて、中古車として売る際のリセールバリュー(売却時価値)の高さは、ブランド力が反映される重要な指標となるが、ここで気になる動きが見られた。

中国汽車流通協会による、2024年5月の平均リセールバリュー(車齢3年)を見てみると、BMWが61%、フォルクスワーゲンが57%、日産が56%であるのに対し、トヨタは61%となり、はじめてホンダ(65%)に抜かれたのだ。

NEVメーカーとエンジン車メーカーの戦いは続く

エンジン車ブランドの中では、トヨタのリセールバリューは高いといえるが、2021年が87%であったことを考えると、近年の値下げ販売により、ブランド力の低下が表れているといえる。

2023年からグローバル市場で「EV失速」のムードが漂っており、中国市場でも「EV販売減速」「PHEVの躍進」「熾烈な価格競争」「外資系シェアの急落」などが起きている。

その足元で、トヨタの中国販売に占める電動化率(HEVを含む)は約45%となり、中高級でも40%となった。EVの販売台数も、実数としては少ないものの、昨年比では大きく伸びている。

こうした変化から、EVの一時的減速でひと息つくのではなく、トヨタが着実に「マルチパスウェイ」戦略を推進することがうかがえる。

今後、中国でエンジン車の残存者利益を獲得するため、トヨタはHEVのコストダウンや大型車の差別化など、既存のフルラインアップ戦略を見直す必要があり、同時にSDV(ソフトウェア定義自動車)や、コネクテッド機能を備えるEVの開発スピードを上げる必要がある。

一方、NEV向け車両購入税の免除政策(車両価格の10%に相当する優遇)は2027年に終了する予定だ。この先、NEVメーカーとエンジン車メーカーの間で熾烈な消耗戦が行われ、トヨタの中国事業には厳しい試練が待ち受けているといえる。

湯 進:みずほ銀行ビジネスソリューション部 上席主任研究員、中央大学兼任教員、上海工程技術大学客員教授

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