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TOPIXは日経平均より魅力的になるかもしれない 今回の東証TOPIX改革は「ビッグサプライズ」だ

東洋経済オンライン / 2024年7月5日 9時30分

このように「浮動株時価総額上位96%」というリバランスの基準があることで、今後はTOPIXに安住することができなくなる。具体的に言うと、TOPIXの浮動株時価総額上位96%の銘柄数は、およそ1000となる。現在のTOPIXが約2100銘柄なので、約半分のイメージだ。

今後、既存のTOPIX構成銘柄は、見直しによって除外されるとTOPIXをベンチマークとするパッシブ運用の機関投資家から大量の売りが出るため、株価は下落する可能性が高い。構成銘柄から外れると、TOPIXをベンチマークとするアクティブファンドも保有しなくなる可能性があるためだ。

逆に今までTOPIXに採用されていなかった非構成銘柄は、追加されるとパッシブファンドから大量の買いが入るため、株価の上昇が期待できる。加えて、アクティブファンドの投資対象銘柄となり、さらに流動性も向上する可能性も出てくるのだ。

そのため、繰り返しになるが、除外されそうな既存のボーダーラインすれすれの構成銘柄と、追加されそうな非構成銘柄は、いずれも株価を上昇させるインセンティブが大きく働くことになる。スタンダードやグロース市場の銘柄でも時価総額が大きくなれば、TOPIXの銘柄として認めてもらえるからだ。浮動株時価総額上位96%(約1000銘柄)のTOPIX構成銘柄となるために、ボーダーライン前後の銘柄群の熾烈な競争が生まれるだろう。

今後、構成銘柄に選ばれるためには、まずは収益向上を目指すことになるだろう。例えば、積極的なIR活動で会社の知名度を上げ、身の丈に合った増配なども実施されるはずだ。

さらに浮動株比率を上げるため、安定大株主による持ち合いなども解消されよう。このような競争原理が働くことにより、従来よりも桁違いの市場の活性化にもつながるだろう。中期的な日本経済そのものの活性化にも大きく寄与するはずだ。これでTOPIXの未来は明るくなったと言える。

日経平均よりもTOPIXが魅力的になる可能性も

では、今回の「TOPIX改革第2弾」はどのくらいのインパクトがあるのだろうか。日本の公的年金の9割がパッシブ運用だが、これと日銀の日本株のパッシブ運用残高を合計すると、100兆円超の規模となり巨額だ。これらはTOPIXをベンチマークとした運用が多い。

今後、対象銘柄が2000超から1000銘柄程度へと大幅に減少することは、こうしたパッシブ運用の機関投資家だけでなく、すべての株主にとってメリットがある。運用をするにあたって、「議決権行使」などの作業負担が大きく軽減され、議案の精査などに時間を使える。またその分、1社あたりの「エンゲージメント」(経営者との直接対話などを通じて投資先企業に対して企業価値が向上するような提案や提言をすること)に時間をさくことが可能になるからだ。

これは、一企業だけでなく、日本経済そのものを活性化するような話だ。今後のTOPIXは日経平均株価に比べても「買い」になるはずだ。「エンゲージメント」が一段と深化し、その手段として厳格な「議決権行使」などをすることによって、これまで以上に株主と企業に適切な緊張感が生まれるとみている。中期的なTOPIXの上昇に期待したい。 

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

糸島 孝俊:株式ストラテジスト

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