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豊臣秀吉が現代に甦って問題企業に喝を入れたら 豊臣秀吉が現代に甦って問題企業に喝を入れたら

東洋経済オンライン / 2024年7月6日 18時0分

「わかりました。では監査法人に問い合わせいたします」

「だ・か・ら! お前にそんなことをする資格はない! この会社はわしのものだ! お前のような若造に指図される覚えなどない!」

謎の声に導かれクライアントと真っ向対立

金田のあまりに横暴な態度に、倫太郎の中でなにかが弾けた。

「金田社長。そのお言葉はいかがなものかと。金田産業は大勢の株主が支える上場企業です。社長の所有物ではありません。違いますか」

「貴様……」

「倫太郎、そやつとだけ話しても埒があかぬ。周りをよく見よ。城を落とすは敵の結束の乱れを突くが上策じゃ。この様子を見るに、家臣に必ずそやつを憎む者がおる。ほれ、隣の小男をよく見よ。唇の端がわずかに歪んでおる。己の主が責め立てられるさまを楽しんでおるじゃろう」

声に導かれ視線を金田の右隣に向けると、貧相な身体の男が、たしかに口元を緩め興味深そうに金田の顔を盗み見していた。副社長の水上だ。

「水上副社長は、どうお考えですか」

倫太郎の問いかけに水上は一瞬、驚いたような表情を浮かべたが、すぐに顔を引き締めた。

そして軽く息を吸うと、

「もちろん弊社の処理は適法と考えますが、問題があったとすれば……」

噛み締めるようにゆっくりと返答した。さらに言葉を続ける。

「当然、経営責任が……」

「水上! 余計なことを喋るな! おいッ、伊志嶺!」

慌てた様子で金田は水上を睨みつけ、水上の隣に座る男を指さした。伊志嶺と呼ばれた男は弾かれたように背筋を伸ばし、機械仕掛けの人形のごとく立ち上がった。

「財務本部長としては、なにも問題ございません!」

「こやつは織田家での佐久間信盛のようじゃの。主君の顔色を窺うばかりの無能者ゆえ相手にせんでええ。その横の部長とやらは、しきりに身体を揺すり肚が据わっておらぬ。あれを詰めよ」

倫太郎は、伊志嶺の隣に座る男に視線を移す。財務部長の西村だ。

「西村部長」

「は、はい」

「この買収した会社、マリーンシステムの試算表(※)を見せてもらえませんか」

(※)決算報告に使う資料のもととなる、詳細な内容が記載された表

明らかにおかしな決算書の裏側とは

「試算表ですか……」

西村は目をぱちぱちさせた。

「マリーンシステムには15億の価値がついていますが」

倫太郎は鞄から資料を取り出した。

「昨期のマリーンシステムの売上が8千万、最終決算は2千万の赤字です。取り立てて新しい技術を持っているような事実もない。どうすれば15億もの価値がつくのでしょうか」

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