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豊臣秀吉が現代に甦って問題企業に喝を入れたら 豊臣秀吉が現代に甦って問題企業に喝を入れたら

東洋経済オンライン / 2024年7月6日 18時0分

「あの者、差し詰め所領没収のうえ切腹といった処か」

黄金の着物で身を包み、色黒でしわくちゃな顔をした男。

小柄ではあるが纏うオーラは周囲を圧する。この貧困層から天下人に成り上がった英傑は、 目の前のソファにどっかと座っている。しかし、その姿は倫太郎にしか見えない。

「殿下。この時代に切腹はありません。会社を追い出されるくらいです」

倫太郎は恭しく答えた。こんな時代がかった言葉がなんの違和感もなく出てしまうほどの威厳が、この男にはある。

「なんじゃ。またぞろ同じことを起こすぞ。将に情けは不要。一族郎党、ことごとく根絶やしにせよ。将はその覚悟で生きねばならぬ」

男は物騒なことを言う。倫太郎は苦笑した。

「それは殿下の時代のことです。今はよほどの悪事に加担しないかぎり死刑になどなりません。まして家族や親せきが同罪になることもないのです」

「それならばやりたい放題ではないか。秩序が保てぬ」

「そうかもしれませんが、殿下の時代ほど治安は悪くないので……」

「訳の分からん時代じゃの。儂に言わせれば糞のようじゃ」

天下人はしわくちゃな顔を、さらにしわくちゃにして鼻を鳴らした。

「それにしても……金田社長は強烈なカリスマとバイタリティーで組織を引っ張ってきた人物です。まさか、あんなに簡単に裏切者が出るとは……」

「あの者は勇将だが良将にあらず。己が力を過信し家臣や周囲の者を顧みぬ。そのうち身に迫る危険すら感じぬように成るものじゃ。はて……儂の近くにも、そのような者が……」

金田の顔を思い返し、倫太郎は溜め息をついた。今回は彼を追い詰めるのがタスクだったが、あまり気持ちのいい仕事ではない。とはいえ、あそこまで不遜な男なら相当な余罪があるだろう。それは決して許されるものではないとも思った。

自信なくして生き残ること能わず

「どうした? 同情したのか?」

「いえ」

倫太郎は首を振った。

「金田社長は公器である上場企業を、いつまでも我が物のように考えていました。それは間違いですし、糺すのに躊躇はありません。ただ、あまりにうまくいったので……」

「負けると思わば負ける。勝つと思わば勝つ。逆になろうと人には勝つと己に言い聞かさねばならぬ。儂は、上杉謙信であれ武田信玄であれ、この儂には敵わぬと信じておった。彼奴らが生きておれば必ず家臣にしたであろう」

「すごい自信ですね」

倫太郎の口から思わず言葉が出てしまったが、この男が生涯で成したことを思えば当然だ。溢れ出る自信、オーラ、そして見る者を惹きつける器の大きさ。すべて桁違いだ。これほどスケールの大きい男を、倫太郎は見たことがなかった。

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