1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

豊臣秀吉が現代に甦って問題企業に喝を入れたら 豊臣秀吉が現代に甦って問題企業に喝を入れたら

東洋経済オンライン / 2024年7月6日 18時0分

「それは……」

西村の顔が歪み、明らかに動揺の色が浮かんだ。

「マリーンのシステムは、まだ研究開発の途中だ。来年から本格始動する!」

「金田の言葉は切って孤立させよ。さすれば事は動く」

「西村さん。私はあなたに聞いています」

倫太郎は金田に視線を移さず、まっすぐに西村の目を捉えた。

「なんだと!」

興奮した金田は、今にも倫太郎につかみかかってきそうだ。

「西村さんは財務部長として、この取引のおかしさに気づいていたんじゃないですか。上場会社は公器です。ここでごまかすのは犯罪の片棒を担ぐのと同じ。あなたは会社だけでなく自分の身も守るべきだ」

「自分の身……」

西村は腕組みをした。

「西村ッ!」

金田のこめかみに、みるみる血管が浮かび上がっていく。

「もはや、そこ迄じゃ」

倫太郎の背後から聞こえる声は、冷徹であった。

「将たる者、誤りあれば責を負い兵を救う。兵を救わぬ者、将にあらず」

「会社のトップは、なにか誤りがあれば責任を負って組織を救う役目があります。そして組織あればこそのトップです。組織、従業員を守らず、己だけを守ろうとする者が留まってはなりません」

「貴様ァ!」

金田は倫太郎の胸ぐらを掴んだ。

役員会で生じてしまった造反劇

「金田社長!」

副社長の水上が突然立ち上がった。その語気の鋭さに金田は一瞬怯んだが、みるみる顔を朱に染め上げ、水上を睨みつけた。

「なんだ! 水上!」

「武田さんのおっしゃる通りです。マリーンシステム買収の件は前々からおかしいと思っていました」

「貴様……誰に向かって……」

「我々には株主に対する責任があります! 問題があれば正す。それが取締役の務めです」

「偉そうに……」

「西村くん! 君の見解を正直に言いたまえ。責任は問わない」

水上は諭すような口調で西村に言った。

「かかかか、裏切者が動いたの。これで仕舞いじゃ。将は窮地に至れば粛々と判断・決断せねばならぬ。それに家臣は常に我が身の目付を頼み、意見を賜り、我が身の善悪を聞き万事心につける。そういう家臣を持たず己を戒める心掛けすら無い故、こうして裏切られるのじゃ」

「正直に申し上げますと、マリーンシステムには5億どころか1千万の価値もないと思います。あくまでも決算対策ということで財務本部長から……無理に……」

「西村ァアアアアアアア 」

金田は白目を剥き、後ろにひっくり返った。

謎の声の主はいったい誰なのか

「やれやれ。これでお役目は果たせたか……」

すべてが終わり、広い会議室で倫太郎がぽつりとひとりつぶやいた。ずっしりとした疲労感が全身にのしかかる。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください