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サブカルチャーは時間遡行をどう描いたのか? SF作品から「時間の流れ」について考える

東洋経済オンライン / 2024年7月7日 19時0分

「時をかける少女」は、中高生向けの雑誌に連載されたジュブナイル小説であり、科学的な説明はほとんどありません。むしろ、自分が他者と異なる人間に変化してしまう怖さや、明瞭な記憶が事実でないかもしれないという不安のような、思春期の惑いを描くことが主目的の作品なので、あえてパラドクスには目をつぶったのでしょう。

この小説は人気を呼び、繰り返し映像化されます。特に有名なのが、大林宣彦監督による1983年の実写映画と、細田守監督による2006年のアニメ映画です。

大林作品では、起きなかった出来事の記憶というモチーフを拡大し、自分が事実だと信じて疑わなかったことが、実は捏造された記憶だった悲哀が強調されました。

一方、細田作品では、自分にとって都合の悪い出来事を時間跳躍で「なかったこと」にしているうちに、自分の力ではどうにもならない大きな悲劇を生み出してしまう物語が展開されます。

どちらの作品も、科学的な合理性はありませんが、時間の問題を人生のあり方と結びつけた名作です。

ゲーム『Steins;Gate』の歴史改変チャレンジ

近年のサブカルチャーで特徴的なのが、「何度も繰り返し過去に戻る」という設定が好まれることです。この傾向は、1980年代から流行が続いているPCゲームに起源がありそうです。

AVG(アドヴェンチャーゲーム)やRPG(ロールプレイングゲーム)と呼ばれるゲームでは、プレーヤーが主人公のキャラクターを操って、さまざまな冒険を体験します。

しかし、何の障害もなく最後まで話が進んでいくのでは、面白くありません。途中で凶悪なモンスターに襲われたり悪人の奸計にはまったりして、命を落とします。そうなると、セーブポイントまで戻って、途中からゲームを再開しなければなりません。このとき、プレーヤー自身はしくじったときの記憶を保持しているので、今度は艱難をくぐり抜けて先へ進むことができる訳です。

こうしたAVG/RPGの流れを物語に応用したのが、「繰り返し過去に戻る」というSF的設定であり、この設定を最大限に利用したのが、それ自体がAVGである『Steins;Gate』(2009)です。2011年にテレビアニメ化され、大ヒットしました。

ひょんなことからタイムマシンを発明してしまった青年が、ある悲劇的な事件を阻止するため、何度も過去に戻って歴史を変えようとするストーリーが展開されますが、これで解決かと思った瞬間に、意外な形で話が急転するのが見所です。

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