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サブカルチャーは時間遡行をどう描いたのか? SF作品から「時間の流れ」について考える

東洋経済オンライン / 2024年7月7日 19時0分

『Steins;Gate』の宣伝に「99%の科学と1%のファンタジー」という惹句が使われますが、そんなに科学的ではありません。もっとも、その点を批判するのは野暮というものですが。

テレビアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』の無限タイムループ

「何度も過去に戻ってやり直す」という設定が人気を呼ぶのは、AVGやRPGなどのゲームに親しんだ人が作品世界に入り込みやすいからでしょう。こうしたゲームは、一貫してプレーヤーの視点で描かれ、他者への配慮は乏しいのがふつうです。

多世界解釈に基づく作品で気になるのは、主人公の行動によって別の世界が丸ごと消滅するという展開になるとき、自分の人生体験が「なかったことにされる」人々に言及されていない点です。

1930年代の量子論でも、「人間の観測行為によって何が起きるかが決定される」という議論がなされましたが、ならば観測していないその他大勢の人間はどうなるという問いにはまともに答えられませんでした。

1960年代以降の量子論では、統計的な性質を考慮する手法が進歩し、人間による観測を重視する研究者はあまり見かけなくなっています。

「なかったことにされる」人々に目を向けたのが、2009年のテレビアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』の中のエピソード「エンドレスエイト」です。

この作品で描かれるのは、自分の思い通りにならなかった日々をやり直したいと願う少女が、無意識のうちに超能力を発揮して、世界全体の時間を巻き戻してしまう過程です。

時間を巻き戻したものの出発点となる条件が同じなので、結局、何度やっても思い通りにならず、再び時間が巻き戻されるのですが、そのたびに「なかったことにされる」人々の姿が丹念に描写されます。

同じ歴史が何度も繰り返されるというSF作品の中では、プレーヤー視点に束縛されず他者への配慮を示した傑作だと思います。

吉田 伸夫 :理学博士

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