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移住10年の学者が推す「出会い」創れる意外な施設 定住者の増加に必要な「人間のつながり」

東洋経済オンライン / 2024年7月7日 10時30分

私の自宅から徒歩10分圏内には、さまざまな歴史的な建造物がある。だが、文化的な素養にとぼしい私は、そのうち訪ねようと思いつつ、ほったらかしにしてしまっている。

箱根の日帰り温泉はそれなりに高いから足が遠のいた。坂の上から見下ろす美しい景色もすっかり見慣れてしまった。たしかに魚はうまい。だが、うまい魚は、海のあるところならどこでも食べられる。

小田原で暮らすようになり、QOL(Quality of Life)は確実にあがった。この原稿も庭の景色を楽しみながら書いているが、これ自体、東京ではできなかった話だ。

だが、豊かさに鈍感になり、よさを痛感することが難しくなった。人は豊かさにも、貧しさにも慣れるものだ。小田原のよさを実感するのは、この街を離れたときなのかもしれない。

子どものいる移住組を悩ませる「いつまでいるか」問題

街を離れる。いつまでこの街に居続けるのか。これは、子どものいる移住組にとって、大きな話題の1つだ。

東京から小田原に越してくる人たちは、新幹線通勤が多い。おそらくは、大手企業に勤める人たちだろう。子どもを自然豊かな土地で育てたい、という話をしばしば耳にする。

そこまではいい。問題は、そうした家庭の子どもたちは、受験をして、私立の中学校や高校に進学するケースが多いことだ。

私立の進学校は神奈川県では東側に集中している。当然、子どもは通学に、親は弁当の準備や送迎に、かなりの時間、体力が割かれる。だからだろう。子どもの受験を機に、東京近郊に再び引っ越してしまった友人たちは少なくない。

じつは、わが家もまた、この問題が直撃している世帯の1つだ。だが、この街から出ていこうとは誰もいわない。なぜなのか。その理由を連れ合いと話したことがあった。

長男、長女は、地区青年部のメンバーだ。お祭りをはじめとする自治会行事の担い手になっている。月に一度の部会、終了後の食事会は彼らの楽しみであり、早起きでしんどいはずの子どもたちだが、引っ越しという言葉は聞いたことがない。

私も、地域での勉強会や市民活動を通じて多くの友人ができた。青年部の仲間もいる。まず思い浮かぶのは、引っ越しと聞いた仲間たちの悲しそうな顔だ。連れ合いも同じで、ママ友とのつながりを思うと、どうしても後ろ髪を引かれるらしい。

周囲の移住者を見てみる。すると、NPOを立ちあげたり、子どもたちの居場所づくりをやったり、マルシェを出店したり、いろんな活動を楽しんでいる人たちが多い。

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