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移住10年の学者が推す「出会い」創れる意外な施設 定住者の増加に必要な「人間のつながり」

東洋経済オンライン / 2024年7月7日 10時30分

こうやって考えてみると、「定住者」は、他者との<つながりづくり>に成功した人たちが中心だ。それが「賃貸生活」から「持ち家生活」に変わる大きな動機になっている。もちろん、家を持てば、引っ越しのハードルも一気にあがる。

駅近の賃貸生活を楽しんでいる人たちにとって、こうした人の輪に加わるきっかけを持てるかどうかが重要なポイントだ。でも、私の知る限り、小田原も含めて、そうした施策を有効に打ち出している自治体はあまり多くない。残念なことだ。

アメリカに夫婦2人で住んでいたときの出来事

「人間のつながりをつくるって、言葉でいうほど簡単なことじゃないよね」

私の問いかけを聞いた連れ合いは、2人でアメリカに住んでいたときのことを話しはじめた。

当時、知り合いのいなかった私たちは、暇つぶしに近所の「公共図書館」に足を運んだ。日本で図書館といえば、本を借りる場所、静寂に包まれた空間だ。だがアメリカでは、訪れた人たちが楽しそうに話しており、なんとなく雑然とした空気を漂わせていた。

入り口に大きな掲示板があり、そこにかなりの数のチラシが貼ってあった。イベントやサークルの告知がほとんどだった。連れ合いはそのなかから英会話教室の募集を見つけ、良いチャンスだからといって、早速、連絡をした。

「本当に保守的な先生だったんだけどね」

彼女は懐かしそうに言う。だが、やさしい先生で、外国人を近所に住むアメリカ人と友達にしようと、生徒とその家族をたびたびホームパーティーに招待してくれた。

何度目だっただろう。私たちは初老の夫婦と出会った。男性は私たちもよく耳にするコンピューター会社を退職した人で、日本を訪れた経験を持つ人だった。

私たちはすっかり彼らと意気投合し、お互いの家を行き来するようになった。そして、帰国の直前に、私たちを忘れないで、と寂しそうにいいながら、街の風景を収めた自作の絵を2人はプレゼントしてくれた。

とても懐かしい記憶だ。すべての出会いは、たった1枚の図書館のチラシからはじまった。

「日本でも、図書館があんなふうになればいいのにね」

私はうなずいた。でもどうして、私たちは、図書館を<出会いの場>と考えないのだろう。

公共図書館と公民館が分離された理由

戦後の日本では、文部省(現在の文部科学省)の構想をGHQが修正するかたちで、公共図書館と公民館が分離された歴史を持つ。背景にあったのは、図書館業界からの強い反発、文部省への権限集中を恐れたGHQの思惑だった。

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