1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

ワームホールやワープドライブの科学的可能性 タイムトラベルから見る「時間」とは?

東洋経済オンライン / 2024年7月10日 17時30分

映画は、人類とは別の知性が建造したワームホールの端が、土星近くに黒い球体として出現するところから始まります。

絶滅の危機に瀕していた人類は、ハビタブル(生存が可能)な惑星を目指して先遣隊に突入させますが、ワームホールを通過した主人公が何を目撃するかが、物語のテーマとなります。

ところで、『インターステラー』に描かれたような、ワープを可能にするワームホールは、現実に存在するのでしょうか?

SFファンの期待に反するようですが、その可能性は、きわめて低いと言わざるを得ません。

ワームホールは、自然に生じるような構造ではありません。

宇宙の始まりであるビッグバンの時点で、エネルギー分布は非常に滑らかであり、時空がねじ曲がった虫食い穴のような構造が、天文学的スケールで偶然できてしまうとは、考えにくいのです。

また、たとえワームホールが何らかの仕組みで形成されたとしても、その構造は不安定で、一瞬でつぶれ消滅してしまいます。ワームホールを維持するためには、エキゾチック物質と呼ばれる、これまで人類が見たこともないような不思議な物質を支持材としなければなりません。

こんな話を聞けば、ワームホールはありそうもないとわかるでしょう。

ところが、一流物理学者の中にも、ワームホールについて真剣に研究している人が少なからずいます。

その理由は、ワームホールが実在しそうだから……ではなく、一般相対論のように完全には理解し切れていない理論の場合、常識外れとも思える極端な状況を想定することで、理論の適用限界や新学説構築の手がかりが見えてくるからです。

たとえ実在しなくても、ワームホールの研究を通じて、停滞気味の理論物理学で突破口を見いだせるかもしれません。

もちろん、人類を遥かに超える超知性体が、思いもよらぬ方法でワームホールを建造することが決してないとは言えませんが……。

テレビドラマ『スタートレック』のワープドライブ

1960年代に放送が開始された懐かしのテレビドラマでありながら、いまだに多くのファンを魅了するのが、『スタートレック』です(日本では、『宇宙大作戦』というタイトルで放映されました)。

このドラマでは、宇宙船U.S.S.エンタープライズが宇宙狭しと飛び回る際、ワープドライブと呼ばれる超光速航法が頻繁に使われました。

ドラマ内でワープのメカニズムが説明されることは、ほとんどありませんでした。どうやら、亜空間と呼ばれる特殊なフィールドを生み出し、その中で超光速に加速するという仕組みのようです。

まじめな物理学の議論に亜空間が登場することはまずありませんが、多少なりとも似たものとしては、ブレイン宇宙論に出てくる余剰次元があります。

これは、通常のほぼユークリッド的な3次元空間の外側に、別の次元が存在しており、われわれの見る3次元宇宙空間は、4次元宇宙空間内部に浮かぶ膜(ブレイン)のようなものだという考え方です。

残念ながら、ブレイン宇宙における物理的な相互作用を調べると、物質はほぼ完全に3次元空間に束縛され、外に出るのは不可能だと判明しました。

もちろん、余剰次元に移動して超光速航行することはできません。ブレイン宇宙論以外にも、通常の3次元空間とは別の空間が存在するという学説はありますが、そこを通ってワープできる可能性があると示したものは、今のところ見当たりません(できると面白いのですが)。

吉田 伸夫 :理学博士

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください