日本に「暇があって、小銭がある人」が減った結果 1980年代まで日本が世界的に目立っていた理由
東洋経済オンライン / 2024年7月12日 9時0分
今年、日本がGDP(国内総生産)でドイツに抜かれて世界4位(2023年)に転落したことは話題となった。だが、「国の力」とは経済力や軍事力だけでは測れない、と、今の日本の不自由さに警告を発する『だからあれほど言ったのに』を上梓した思想家の内田樹氏は語る。日本が再び本当の意味で”豊か“になるカギは、個々が自分のスキルを切り売りすることではなく、それを社会や他人と共有することだという(インタビュー前編はこちら)
国の豊かさは公共財の多寡で決まる
――日本では「勝ち組」の個人が豊かになる一方で、国や地域共有の共有資産「コモンウェルス」については劣化している感じがします。日本は共同体として貧しくなっているのでしょうか。
【写真】内田樹氏は「今の日本はアーリーアダプターの層がどんどん薄くなっている」と指摘した
全員が競争相手の取り分を「減らす」競争をしているわけですから、国が豊かになるはずがありません。そもそもある国が豊かであるかどうかは、「公共財」の豊かさに基づいて考量されるべきものなんです。
三流の独裁国家では独裁者とその周辺が国富の大半を私財として占有しています。自然資源が豊富な国だと、独裁者とその取り巻きの私財は天文学的な数字になります。でも、そんな国を「豊かな国」と呼ぶ人はいません。
国の豊かさは公共財の多寡で決まります。教育であれ、医療であれ、文化活動であれ、国民が誰でも無償でアクセスできる資源が豊かであれば、たとえ個人資産が貧しい人でも、不安なく豊かな生活を送ることができます。
でも、公共財が貧しければ、例えば、社会福祉制度がないとか、国民皆保険制度がないとか、学校教育がすべて有償であるとか、図書館や美術館やコンサートホールが高額の入場料を徴収するとかいう社会だと、貧困層はひたすら貧困化するだけで、社会的上昇のチャンスがない。
今の日本は公共財がどんどん貧しくなっています。「民営化」という名の下に公共財を安く売り払って、権力者とその取り巻きたちの私財に付け替えている。それがすさまじい勢いで進行しています。公共財を自分の私財にした人たちが「成功者」と呼ばれ、現代日本社会の超富裕層を形成しています。
イノベーションが生まれない国の特徴
――一方で、日本では貧しい人たちは公共財にアクセスできなくなっている。
公共財が乏しくなると、貧しい市民たちはどれほど劣悪な雇用条件でも受け入れざるを得なくなる。企業はそうやって人件費削減を行っている。
この記事に関連するニュース
-
安易に「共生社会」語る人に伝えたい"危うい盲点" 一方だけが得をする「寄生」になっていないか
東洋経済オンライン / 2024年7月14日 13時0分
-
フランス総選挙・極左政党の台頭が意味すること マクロン大統領との「保革共存」可能性も
東洋経済オンライン / 2024年7月11日 9時40分
-
「エアコン節約で人がバタバタ倒れる国ニッポン」国民負担率約5割&物価高で"中流完全崩壊"という漆黒の絶望
プレジデントオンライン / 2024年7月5日 10時15分
-
日本に迫る政党の「ガラガラポン」
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月28日 17時20分
-
欧州のプライベートバンクの資産運用を日本に――磨き続ける「目利き力」が顧客との信頼をつなぐ ピクテ
Finasee / 2024年6月26日 10時0分
ランキング
-
1ドラマ「西園寺さん」ヒットの予感しかない3理由 「逃げ恥」「家政夫ナギサさん」に続く良作となるか
東洋経済オンライン / 2024年7月16日 20時0分
-
2「これは奇跡...」破格の1人前"550円"寿司ランチ。もうこれ毎日通いたい美味しさ...。《編集部レポ》
東京バーゲンマニア / 2024年7月16日 7時2分
-
3月々のスマホ代を「高いと感じる」…「2000円もすることに驚いた」「安いプランなのに高い」格安プランに乗り換える?
まいどなニュース / 2024年7月16日 19時45分
-
4丁寧な言葉遣いで一見おとなしい人ほど陰湿攻撃がエグい…「目に見えない攻撃」を繰り出す人「6パターン」
プレジデントオンライン / 2024年7月16日 15時15分
-
5夏本番となり職場や電車内などで発生する「ニオイ問題」 揉めるぐらいなら我慢したほうがいいのか、解決策は「ない」という現実
NEWSポストセブン / 2024年7月16日 16時15分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください