日本に「暇があって、小銭がある人」が減った結果 1980年代まで日本が世界的に目立っていた理由
東洋経済オンライン / 2024年7月12日 9時0分
国力というものをどういう指標で計るのか、いろいろ考え方はあると思いますが、僕は「集団としてのパフォーマンスの高さ」で計るべきだと思っています。平時だけではなく、危機的状況に遭遇すると、それに対応して適切に変容して生き延びることができる能力を僕は「集団の力」としては重く見ます。
集団の一部に天文学的な私財を積み上げている人がいたとしても、大多数が貧しく、ろくな教育も受けられず、医療的ケアも足りないし、文化資本も持っていないというような国は「国力が低い」と僕は評価します。
そういう国は危機耐性が低いだけではなく、「イノベーション」も起きないからです。イノベーションというのは、学術的なものでも、芸術的なものでも、集団の全員にチャンスがあるところでしか起きません。
――今の日本には「余裕がある人」が減っているということですか。
マーケティングの用語に「アーリーアダプター」という言葉があります。イノベーターが前代未聞の斬新なアイディアを提示したときに、真っ先にそれに反応して、イノベーターを支援し、その意義を他の人たちに伝え、説明する人たちのことです。
今の日本はアーリーアダプターの層がどんどん薄くなっています。アーリーアダプターの条件はただ「変化に対する感度がよい」というだけではありません。「暇があって、小銭がある」というのが必須の条件です。
朝から晩まで働き詰めで、かつ財布が空っぽというような人は「新しいこと」なんかに興味を持つことができません。この「暇があって、小銭がある」人たちが一定数存在するためには分厚い「中産階級」が必要です。アーリーアダプターは「中産階級の副産物」だからです。
イノベーションは「中産階級の副産物」
戦後のイギリスは「ゆりかごから墓場まで」の手厚い福祉制度を整備しました。その結果、それまで文化資本にアクセスする機会がなかった労働者階級の子どもたちの中から大学に進学したり、楽器を演奏したり、絵を描いたりする者がでてきた。
1950年代末から1980年代末までの30年間の日本もその状態に近かったと思います。活気があった。今の日本が失った最大の人的資産はこの「アーリーアダプター」「暇と小銭がある人たち」だと僕は思います。
今の日本だと、こういう人たちはたぶん「寄生虫」とか「フリーライダー」とか呼ばれて排除の対象にしかなりません。それなら、今の日本から「新しい世界標準」が生まれるチャンスはほとんどないと言ってよいと思います。
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