天然木の家に「今はひとり」42歳起業家の暮らし 「人が好き」でも家族・夫婦の枠組みは息苦しい
東洋経済オンライン / 2024年7月13日 11時0分
また家のスポットごとに飾られた雑貨類は、素朴な民芸調だ。これらは控えめだが、洗練された空間に温かみを添えるアクセントとなり、くつろいだ雰囲気をつくっている。
「頻繁に訪れている沖縄で自分へのお土産を買ってきて、それを飾ったりもするんですけど、雑貨類は、ほとんどがいただきものなんです。家に遊びにくる友人が置いていったり、誰かからプレゼントされたり。例えば、窓際の机は友人のお父さんが亡くなられたときに、譲っていただいたものです」
「ひとり暮らし」ならではの時間
前のパートナーの好みに従って建てた家に、今もひとりで住み続ける糟谷さん。
「わだかまりはまったくないですね。ちょっと変わった家だからこそ、気持ちが切り替わるし、木の香りにも癒やされる。彼女がこの家を選んでくれて、よかったと思っています。
普段は睡眠時間込みで9時間弱しか自宅にいませんが、そのなかで豆からコーヒーを淹れて、本を読んだり映画や動画を見たり。家には仕事を持ち帰らず、ゆっくりと過ごすようにしています。
そうやって自分を解き放って心を遊ばせるなかで、仕事の新しいアイデアや、課題の解決方法がひらめくことがあるんです。ひとり暮らしならではの、貴重な時間ですね」
気持ちの向くままに読みたい本を読んだり、映画を見たり、そんな時間が創造性を高めるのだろう。夏には涼しい木漏れ日、冬には温かい暖炉があり、興味や思考の軌跡が集積されたオブジェのような本棚がある。自宅で憩う糟谷さんは充足して、リラックスしているように見える。
難病の母がいるため、実家の近くに家を建てた
家を建てたのは2018年、糟谷さんが36歳のとき。きっかけは結婚だったが、一軒家を構えようと思った背景には親の病気の問題もあったという。
「僕が起業した2015年と時を同じくして、母が筋萎縮性側索硬化症(ALS)という難病を発病したので、どうしても近くにいなければならない状況もありました。そこで、結婚を機に実家の近くに家を建てたのです。
本音では躊躇もありました。子どもの頃から長男であることのプレッシャーを感じていたので、実家の近くに家を建てることが、自分を縛ってしまうようで怖かったですね」
糟谷さんの経営する会社のメイン事業は、在宅看護の提供である。カフェも一緒に経営する理由は、医療者と患者の垣根をなくし、また病を得た人と、健康な人のどちらも幸せを感じる地域社会をつくるという目標ゆえ。
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