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認知症の父が母の介護ベッドを壊すほど怒った訳 「すぐキレる」症状にどんな言葉掛けが必要か?

東洋経済オンライン / 2024年7月14日 8時50分

認知症の父親が起こした「介護ベッド破壊」事件から、認知症患者さんとの付き合い方を考えます(写真:Mills/PIXTA)

6年後の2030年、認知症の患者数が推計523万人に上るとされる。これは高齢者のおよそ14%、およそ7人に1人に当たる数で、増加する認知症患者をどう支えるかが大きな課題となっている。

これまで1000人を超える患者を在宅で看取り、「最期は家で迎えたい」という患者の希望を在宅医として叶えてきた中村明澄医師(向日葵クリニック院長)の連載。今回は、老老介護の事例をもとに、どんな支え方や言葉がけが必要か、困ったときにはどこに相談すればいいかを、みていきたい。

「診断された」記憶がない

病気の妻を介護しながら2人で暮らしているAさん。私はAさんの妻の在宅医として、Aさん家族と関わるようになりました。

【表でみる】認知症に伴う行動・心理症状6つ。怒りっぽくなる、頑固になる…などの症状が特徴

Aさんは10年ほど前に認知症と診断されています。ただ、進行が緩やかで、生活に大きな支障をきたしていないこともあり、特に治療を受けることなく過ごしてきました。

認知症と診断されたとき、Aさんも医師から説明を受けていますが、その説明自体を忘れており、自分自身が認知症とはまったく思っていません。そうしたこともあって、妻の面倒は十分に見ることができているという認識でいました。

ところが、それゆえに周囲が困り果てる場面が増えてきたのです。

Aさんの妻は、心不全で在宅酸素を使用しており、ほぼ終日、ベッドの上で過ごしています。介護や生活のしやすさを考えると、家の中心にあるリビングに介護ベッドを置いたほうがよく、Aさんもそれに納得してくださいました。

にもかかわらず、ベッドを設置した日、Aさんは「こんなところにベッドがあったら邪魔じゃないか!」と逆上したのです。事前に相談し、了承を得たうえで入れたはずのベッドなのですが、Aさんはどうやら、その話し合いをすっかり忘れてしまったようなのです。

その場に居合わせた介護スタッフが、「お話ししましたよ」「AさんもOKとおっしゃっていたのに」などと言おうものなら、「俺は聞いてない!」と、さらに怒りがヒートアップ。力任せにリビングからベッドを移動させた結果、ベッドが壊れてしまいました。

包丁をちらつかせてケンカ

スタッフに聞けば、こうしたトラブルは“これまでにも何度も起きている”よう。

認知症の影響で、感情のコントロールが利かない場面も出てきており、例えば近くに住む子どもと親子げんかをしたときには、包丁をちらつかせて脅すようなことも何度かあったといいます。

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