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NYタイムズ「7年で売上半減」から劇的復活した訳 老舗企業をV字回復させた「すごいDX処方箋」

東洋経済オンライン / 2024年7月17日 11時30分

DXは企業や組織のあらゆる階層で推進されてこそ成功します(写真:ニワトコ/PIXTA)

新聞、雑誌、ラジオ、テレビなど、インターネットの猛威にさらされている「オールドメディア」の苦境が深刻だ。デジタル化の波に乗れず、各社が長期的な業績低迷にあえいでいる。しかし中には、うまくデジタルに舵を切り、先駆的な企業へと変貌を遂げたメディアもある。世界的な報道機関として知られるNYタイムズもそのひとつだ。同社がいかにしてDXを成し遂げたかのか。『THE DIGITAL TRANSFORMATION ROADMAP(デジタル・トランスフォーメーション・ロードマップ)』(デビッド・ロジャース著/東洋経済新報社)を翻訳したNTTデータ・コンサルティング・イニシアティブが、その道のりと秘策を解説する。

トップの号令でデジタル化に先行着手

デジタル革命の黎明期、ニューヨーク・タイムズ・カンパニー(以下、NYタイムズ)は、新しい時代を見据えた大胆な事業再構築プロジェクトに乗り出しました。今日で言うところの「デジタル変革(DX)」です。この一大プロジェクトは、CEO兼発行人の大号令で始まり、トップの全面的な権限を後ろ盾に進んでいくこととなりました。

【ひとめでわかる】DXロードマップのステップ

まず、デジタル化を推進する別部門として、子会社となる「ニューヨーク・タイムズ・エレクトロニック・メディア・カンパニー」を設立。デジタルメディアと広告のエキスパートを同子会社の社長に据え、新たなデジタル人材を続々と獲得し、その後数年間、NYタイムズは、デジタル・ジャーナリズムの新しい形を世に示そうと、様々なプロジェクトに取り組みました。

息を呑むほど美しい同社のマルチメディア特集は、ピューリッツァー賞を受賞し、メディアの新たな可能性を期待させた一方、そのような特別なプロジェクトは、日々作成される紙面とは切り離された存在でした。また、レガシー製品である紙媒体の新聞記事の膨大なアーカイブを、技術チームが1851年までさかのぼってデジタル化する一方、編集者は読者の行動を把握するためのデータを欠いていたままでした。同社は、電子メール、ウェブサイト、SNS、タブレット版、仮想現実(VR)、チャットボットなど、あらゆる最新技術の流れに意欲的な姿勢を見せていましたが、戦略的な優先順位は定まっておらず、事業規律も曖昧でした。

過去の商習慣という呪縛

やがて、社内に深刻な問題が現れ始めます。デジタル改革を担当する独立部門が設立された結果、デジタル化の推進に携わる人員が限られてしまい、それ以外の者は旧態依然としたやり方に固執する状況が生まれてしまったのです。そして、ビジネスとジャーナリズムが分断された旧態依然の組織構造だけが残りました。トップの狙いとは裏腹に、NYタイムズの各部門の責任者やマネージャー陣は、新しいデジタル事業よりも従来の紙媒体事業を露骨に優先したのです。

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