1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

エバラでも勝てず「宮崎の定番"焼肉たれ"」の正体 宮崎でシェア53.8%「戸村本店の焼肉のたれ」の秘話

東洋経済オンライン / 2024年7月17日 10時0分

―焼肉のたれは絶対これじゃないと、と思うんでしょうね。

甘い醤油と同じように、小さい頃からうちのたれを食べてきた子は、大きくなってもこれがおいしいって。それがずっと続いているから今もあるんだろうなと思います。

あと、世代が変わってきて、甘い=おいしいと感じてくれる若い人たちが増えてきて、たれの需要がどんどん北上している感覚はあります。おかげさまで、今は海外まで進出しています。

―海外はどこに出していますか?

シンガポールや香港などアジア圏ですね。一番多いのがシンガポールで、月に1回、大体3トンぐらいの注文が来ます。

シンガポールで外食産業チェーン店を何店舗も手がけている社長が、縁あって沖縄の焼肉屋に行ったらしいんですよ。「こういうのをシンガポールでも出したい」とたれを探すことになり、日本全国の焼肉のたれを試してみてうちのたれを気に入っていただいたようです。

味の決め手は「直火炊き」にあり

―甘口の焼肉だれは多くありますが、「戸村本店の焼肉のたれ」のほかとの違いは何だと思いますか?

うちのたれは直火で炊くということが一番の特徴なんです。大手の企業がたれを大量生産する場合、蒸気を使う、もしくは調味料を合わせて混ぜて作るのがほとんどで、直火で炊きあげるところはほとんどないと思うんですよね。

直火だと、鍋肌についた醤油がこんがりと焦げて、香ばしい風味が出ます。そこもかき混ぜて入れ込んでいるので、うちのたれならではのコクや味わいが生まれています。

―なるほど、甘さが好まれるだけでなく、こうした手間ひまかけて生まれる風味が消費者の胃袋をがっちり掴んでいるんですね。一方で、直火は管理コストも人手も必要になるので、たくさん作るのは大変ですね。

そうなんです。だから規模が大きいところは全部機械化していますよね。でもうちが直火をやめて、蒸気での加熱システムを取り入れるなどの完全機械化をしていたら、こんなに買っていただけていないかもしれません。それくらい重要な部分で、直火はうちの生命線みたいなところです。

うちのたれの作り方は、成分分析をすれば醤油が何%、砂糖が何%、バナナやリンゴがどのくらい、などはほとんど調べられるでしょう。でも、真似するのはなかなか難しい。それは直火でやるのが大変だから作れないわけですね。仮に、直火スタイルを取り入れたとしても量産できないし、管理コストもかかってしまいます。

だから大手さんがわざわざ宮崎シェアだけを取るために、何千万もかけて直火炊きの設備投資や商品開発っていうのはあまり現実的ではないのかなと思いますね。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください