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「商品数を3分の1に減らした」銀座伊東屋のその後 「楽しめる文房具屋」のためにやってきたこと

東洋経済オンライン / 2024年7月18日 9時30分

銀座の老舗文房具屋、伊東屋の本店は、この赤いクリップマークが目印だ(撮影:今井 康一)

企業を取り巻く環境が激変する中、経営の大きなよりどころとなるのが、その企業の個性や独自性といった、いわゆる「らしさ」です。ただ、その企業の「らしさ」は感覚的に養われていることが多く、社員でも言葉にして説明するのが難しいことも。

いったい「らしさ」とは何なのか、にブランドビジネスに精通するジャーナリストの川島蓉子さんが迫る本連載。今回は銀座の老舗文房具店である伊東屋が「らしさ」を追求するために行った大改革を紹介します。

創業120周年を迎える銀座の老舗

東京・銀座4丁目の交差点から、中央通りを京橋方面に向かうと、右手に赤い大きなクリップが見えてくる。創業120周年を迎えた銀座伊東屋の入り口だ。いつ通りかかっても、売り場は多くの人で賑わい、楽しそうな空気が漂っている。そのありようが気になり、社長の話を聞いてみたいと思っていた。

【写真】伊東屋ではオリジナル商品も人気だ

1階奥にあるエレベーターで10階へ。扉が開くと、天井高のある広々とした空間が拓ける。大きな窓から光が降り注ぎ、モダンなテーブルや椅子が配されている。ここは「HandShake Lounge(ハンドシェイク・ラウンジ)」と名づけられたスペースで、企業や個人がミーティングやイベントでレンタルできるスペースだ。こういう場で行うミーティングなら、リラックスした気持ちになり、発想が広がりそうと想像が広がった。

現れた伊藤明社長は、「何を聞いていただいても大丈夫です」ときっぱり。シャープな語り口ながら、笑顔で語ってくれた話から、伊東屋や社員を愛し、仕事を楽しんでいる姿勢が伝わってきた。

伊東屋の創業は1904年、初代の伊藤勝太郎氏が、銀座3丁目に「和漢洋文房具」を扱う店を開いたのが発祥だ。日本のものはもちろん、欧米やアジアのものも含め、世界の優れた文房具を多くの人に伝えたいという思いのもと、店を構えた。

「勝太郎は私の曽祖父にあたるのですが、強い好奇心と実行力を持った人で、目の前のコトやモノから、次々と新しい可能性を見出していきました。その思想は、今も脈々と流れていると思います」(伊藤さん)

2年かけて「伊東屋らしさ」をヒアリング

伊藤さんは日本の大学を卒業後、アメリカのアート・センター・カレッジ・オブ・デザインで工業デザインを学び、1992年、伊東屋に入社した。「当時の店は、商品があふれんばかりに詰め込まれていて、お客さまで賑わっているのですが、ワクワクする楽しさが感じられなかったのです」(伊藤さん)。社員も「言われたことをやる」姿勢の人が多く、未来を拓いていくのは難しいと感じたという。

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