1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

「商品数を3分の1に減らした」銀座伊東屋のその後 「楽しめる文房具屋」のためにやってきたこと

東洋経済オンライン / 2024年7月18日 9時30分

改革のきっかけになったのは、伊東屋銀座のリニューアルだった。「伊東屋とは?」という問いについて、社員をはじめ、お客や取引先を含め、約2年の歳月をかけてヒアリングし、議論を重ね、『伊東屋らしさ』と題した冊子にした。

そして、そこでまとめたミッション、バリュー、ビジョンに基づき、新しい店の構成や内容を決めていった。銀座という立地も含め、伊東屋で過ごしてもらう時間と空間を、いかに有意義で心地よいものにするかに知恵と労を割いた。

豊富にモノが揃っていることが、楽しさや豊かさを意味する時代ではなくなっている中、伊東屋ならではの店構え、品揃え、接客など、次の時代に向けた“らしさ”を追求していったのだ。

【写真】写真フレームや小物入れなど伊東屋のオリジナル商品も人気だ

「15万点もあった店頭在庫をほぼ3分の1に減らしたのです」(伊藤さん)。3分の1に減らすとはただ事ではない。基準はどこに置いたのか――。

「使い続けられるかどうかは、慎重に吟味したことの1つです」と伊藤さん。大量生産・大量消費という文脈に乗せ、微細な差別化を競った新商品を回転させていく仕組みは、時代の文脈とズレてきている。それより「気に入ったもの、センスのいいものを長く大切に使い続けるという価値観を伝えていきたいと考えたのです」。 

自分にとって本当に魅力的なものは、年月を重ねるほど愛着が湧くし、壊れても直して使い続けたいと思うものだ。「時代で変わっていくものでなく、時代をつないでいくものという価値観を重視したのです」という伊藤さんの言葉には、確かなリアリティが宿っていた。

“らしさ”を体現する店の存在

2015年に建て替えられた伊東屋の店舗は、地下1階から地上12階にわたる細長い建物。各フロアは決して広くないが、ゆったりした居心地のよさが漂っている。窓から差し込む光の明るさ、インテリアに使われている素材のあたたかさ、什器のレイアウトの緻密さ、そしてもちろん、品揃えの豊かさや見せ方の工夫など、人の過ごし方に目を向けた店作りにしている。

随所で目にする店員とお客とのやりとりからも、「人」を中心に置いた商いを営んでいる姿勢が見て取れる。「お客様の豊かな体験を提供することを大事にしました」という伊藤さんの言葉が実践されているのだ。

一方、伊東屋オリジナルの商品も充実させている。さまざまな筆記具をはじめ、手帳やカレンダー、革小物まで揃っている。シンプルで上質でありながら、明るく楽しい雰囲気のデザインの商品が揃っていて、ここでも“らしさ”は発揮されている。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください