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トランプがユダヤ系富豪から巨額献金される事情 タブーを破って米大使館をエルサレム移転

東洋経済オンライン / 2024年7月18日 16時0分

へイギーは南部テキサス州サンアントニオのメガチャーチ、コーナーストーン教会の牧師で、全米最大のキリスト教シオニスト組織「イスラエル支援キリスト教徒連合」(CUFI)の指導者です。

イヴァンカはユダヤ教正統派のクシュナーと結婚してキリスト教徒から改宗し、米大統領一家としては初めてのユダヤ人になっていました。クシュナーは不動産会社を経営する富豪の息子です。ハーバード大学卒ですが、父親が大学に巨額の寄付金を提供した見返りの入学といわれています。米名門大では珍しいことではないようです。クシュナー家はネタニヤフ家と長年、家族ぐるみの交際があります。

式典に参列したフリードマン駐イスラエル米大使はニューヨークの高名なラビ(ユダヤ教指導者)の息子です。トランプが1990年代、カジノ経営で巨額の借金を抱えたとき破産法専門の顧問弁護士でした。西岸の入植地ベイトエル(神の家)を長年支援しています。

入植地ベイトエルで1996年12月、母親と息子がユダヤ教のハヌカ(光の祭り)の最中にパレスチナ過激派のテロで射殺されました。葬儀にはネタニヤフ首相が参列しました。私は翌年1月、妻子を殺された入植者の男性の自宅を訪ねて心境を聞きました。取材後、地中海を遠望できる丘の上の入植地内を見て回っていると、ネタニヤフの義弟ハギ・ベンアルツィ氏と出会いました。彼は「ここにまた新しい入植地をつくる。もちろんアラブの土地だったさ」と平然と言い放ちました。

ユダヤ人の社会は小規模です。有力者同士はたいがいどこかで接点があります。ネタニヤフと入植者の義弟、大使館移転を進めた大使は、西岸の入植地でつながっていました。

カジノ王アデルソンのトランプ支援

「カジノ王」アデルソンは開館式典で、最前列中央に妻と着席していました。米西部ネバダ州のラスベガス・サンズ・コーポレーション会長です。米誌「フォーブズ」の億万長者番付で世界第8位にランクされたことがあります。共和党の有力政治家はアデルソン詣でを欠かせません。イスラエルでネタニヤフ支持の新聞を発行し、右派長期政権を支えました。無料紙です。リベラル派は「アメリカで安全、快適に暮らす大富豪が、中東でアラブ人と生きていくわれわれの政治を左右するのはおかしい」と不満を口にしていました。

2016年の大統領選挙でアデルソンは当初、反ユダヤ主義者にも人気のあるトランプへの支援に慎重でした。トランプは同年3月、白人至上主義団体クー・クラックス・クラン(KKK)の元最高幹部からの支持表明を直ちに拒否しなかったことで批判を浴びていました。アデルソンは秋以降、巨額の政治資金を追加支援しました。トランプへの最大の「メガドナー(大口献金者)」です。彼の支援なしではトランプの当選は難しかったでしょう。

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