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トランプがユダヤ系富豪から巨額献金される事情 タブーを破って米大使館をエルサレム移転

東洋経済オンライン / 2024年7月18日 16時0分

アブラハム合意と防空システム、スパイウエア

ホワイトハウスで2020年9月15日、アラブ首長国連邦(UAE)とバーレーンの外相がネタニヤフ首相と国交正常化に合意する文書に署名しました。旧約聖書の族長アブラハムがユダヤ人、アラブ人双方の父祖とされることにちなみ「アブラハム合意」と呼ばれました。10月23日にスーダン、12月10日にはモロッコがそれぞれトランプ政権の仲介でイスラエルと国交正常化に合意しました。

UAEなどがイスラエルとの国交に踏み切った大きな理由は、イランと親イランの武装組織の脅威でした。2019年9月、サウジアラビアの石油施設がドローン攻撃を受けた事件が代表的です。イエメンの親イラン武装組織フーシ派が犯行声明を出しました。サウジ、UAEなどにとってイスラエルの高度な防空システムは、喉から手が出るほどほしい兵器です。イスラエルとアメリカが共同開発した「アイアンドーム」は、ガザ地区のハマスやレバノンのヒズボラが発射する短距離ロケット弾の9割以上を破壊してきたとされます。防空システム「アロー3」はイランの中距離弾道ミサイルを大気圏外で迎撃できるとされます。

権威主義的なアラブ諸国の政府は、イスラエルの高度な盗聴・監視技術にも関心があります。イスラエルの民間企業NSOグループのスパイウエア「ペガサス」はスマートフォンの全情報を盗み取れるとされ、隠れた輸出品になっていました。世界各地で政府高官、野党指導者、ジャーナリスト、人権活動家などのスマートフォンの個人情報が盗み取られ、監視や脅迫に使われた事例が報告されています。2018年にトルコのイスタンブールにあるサウジアラビア領事館で、サウジ出身のジャマル・カショギ記者が殺害された事件でも、ペガサスが利用された疑いが濃いとみられています。

イスラエルは占領地のパレスチナ人をいわば実験対象に、人工知能(AI)やスパイウエアを駆使し、さまざまな監視・盗聴技術を開発し蓄積しています。アラブ諸国のイスラエル接近には、中東の政治的安定や経済発展への期待がありますが、防衛システムや盗聴・監視機器への関心も大きいとみられます。

トランプ登場と反ユダヤ主義の台頭

トランプの登場後、反ユダヤ主義的な白人至上主義者が勢いづきました。

2018年10月、米東部ピッツバーグの「生命の樹」シナゴーグ(ユダヤ教会堂)で男が銃を乱射し11人を殺害する米国史上最悪の反ユダヤ主義事件が起きました。実行犯は白人至上主義者です。2021年1月6日、トランプに煽られて「Qアノン」と呼ばれる謀論者を含むトランプ支持者がワシントンの連邦議会議事堂を襲撃し、選挙結果を覆そうとする大事件が起きました。陰謀論は、過去の反ユダヤ主義のストーリーと酷似しています。

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