東大生が解説、物事を「印象」で語る人に欠けた素養 数学を活用した「確実に正しい答えを出す」方法
東洋経済オンライン / 2024年7月18日 10時30分
数学を使って世の中の仕組みを知ることで、物事を見る視野が広がります。現役東大生の永田耕作さんが数学の魅力について解説する連載『東大式「新・教養としての数学」』。今回は「印象論からの脱却法」について解説します。
リンダは銀行窓口係でフェミニスト運動に参加?
さっそくですが、次の2択のクイズに挑戦してみてください。
問題:リンダは31歳、独身、率直な性格で、とても聡明である。大学では哲学を専攻した。学生時代には、差別や社会正義といった問題に深く関心を持ち、反核デモにも参加した。リンダの現在を推測する次の2択のうち、どちらの可能性がより高いだろうか?
①リンダは銀行窓口係である。
②リンダは銀行窓口係で、フェミニスト運動に参加している
いかがでしょうか。「リンダさんのことなんてわからないから選べない」という人も、直感でいいのでどちらかを選んでみてください。
この問題は、心理学者であるエイモス・トベルスキーとダニエル・カーネマンが発案したものであり、行動経済学の世界では「リンダ問題」として親しまれています。
彼らの研究によると、このリンダ問題を出題された人の大多数が2つ目の選択肢を選んだようです。しかし、この問題の答えは1番です。それも、心理テストのようなものではなく、数学的に①が答えであると断言することができます。それはなぜか、理由を考えてみましょう。
これはこの問題に限った話ではないのですが、イメージがつきにくい問題に遭遇した場合は、簡単な例や自分にとってなじみ深い例に置き換えて考えるとうまくいくことがあります。例えば、もし選択肢が以下の2つであった場合はどうなるでしょうか。
①リンダは結婚している。
②リンダは結婚していて、子どもがいる。
この選択肢であれば、①を選ぶ人が多いのではないでしょうか。
「結婚している」という事象よりも、「結婚していて、子どもがいる」という事象のほうが明らかに条件が厳しいため、問題で問われている「どちらのほうが可能性が高いか」という観点であれば、①のほうが答えになることは納得がいくでしょう。
実は、最初の問いもこれとまったく同じ原理なのです。どれだけフェミニスト運動に参加している確率が高かったとしても、「銀行窓口係である」という事象よりも、「銀行窓口係であり、かつフェミニスト運動に参加している」という事象のほうが確率は小さくなるのです。
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