東大生が解説、物事を「印象」で語る人に欠けた素養 数学を活用した「確実に正しい答えを出す」方法
東洋経済オンライン / 2024年7月18日 10時30分
もちろん、フェミニスト運動に参加している確率が100%であった場合は、両方の確率は同じになりますが、それでも2つ目の選択肢のほうが可能性が高くなるということはありえません。
「合接の誤謬」という落とし穴
では、なぜ多くの回答者は誤った回答をしてしまうのか。ここに、「合接の誤謬(ごびゅう)」と言われる行動経済学の論理、人間の考え方の特性が関係しているのです。
どんな事象であれ、1つの事象が起こる確率と、その1つの事象を含めた2つの事象が同時に起こる確率を比較した場合、後者の確率は前者よりも低くなります。しかし、人間は特定のカテゴリーに典型的だと思われる事柄が起こる確率を過大評価する意思決定プロセスを有しています。(これを、代表性ヒューリスティックと呼びます)。
例えば今回の場合であれば、「リンダはおそらくフェミニスト運動への興味が強いだろう」というステレオタイプが、後者の確率を大きく捉えさせているのです。
この「合接の誤謬」が露見する例は、リンダ問題に限りません。とある専門家に対して、「10年後の未来」について予想してもらう問題を出した研究がありました。
あるグループには、「1983年に、アメリカとソ連の外交関係が凍結する」確率を求めさせ、もう1つのグループには、「1983年に、ソ連がポーランドへ侵攻し、アメリカとソ連の外交関係が凍結する」確率を求めさせました。すると、後者のほうが3倍ほど大きな確率を出力したのです。
もちろんこれも上のリンダ問題と同じように、後者のほうが厳しい条件であるため、後者が起こる確率は前者よりも小さくなります。
しかし、当時の国々の状況から、専門家も「ポーランド侵攻によって外交関係の大きな変化が起こるであろう」という代表性ヒューリスティックが無意識のうちにはたらいていたのでしょう。
この「合接の誤謬」は、誰しも持っているものなのです。
このような数値化されたデータを正しく読み取れない、比較できないことは、情報の正誤判定ができないということにつながります。
では、どうすればいいのか。実は高校1年生で習う数学を使って整理することができます。
「数学Ⅰ・A」で登場する「ベン図」で考える
「数学Ⅰ・A」の範囲の中で、「ベン図」というものが出てきます。これは、全体の集合の中で、何か特定の条件を満たす集合を丸い円を描いて表す表現方法のことです。
例えば、1から10までの数字を全体とした場合、「2の倍数」の集合をAとすると、Aに属する数字は2、4、6、8、10の5つになります。これを、
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