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円安がこんなに続くのは「日本経済が縮んだ」から 貿易収支が改善したのは「悪いJカーブ効果」

東洋経済オンライン / 2024年7月18日 9時0分

円安でも設備投資は増えていない(写真:Bloomberg)

円安が止まらない背景はさまざまだが、中長期的には貿易赤字など構造的な円売り要因が重要であるという見方が増えてきたように思われる。

【図表】この2年間に起きていたのは、同じ貿易収支改善でも「悪いJカーブ効果」だった

もっとも、貿易収支だけをみると、2022年に原油高と円安が進んだ局面と比べれば、赤字幅は縮小してきている。

それでもなお円安が止まらない背景には、貿易収支の「改善パス」に問題があると、筆者はみている。

後述するように、日本では「悪いJカーブ効果」によって望まれないパスで貿易収支が改善している。日本経済の弱さによる貿易収支の改善を、為替市場はまったく評価していないと言えるだろう。

「円安で輸出増」とはならなかった

通常の「Jカーブ効果」とは、円安局面では輸入が増加して貿易収支が悪化する一方で、その後は輸出競争力が増すことによって貿易収支が改善するだろうという考え方である。

日本は輸入の外貨建て比率が高いために円安局面では輸入金額が増加し、貿易収支が悪化(黒字縮小、赤字拡大)しやすい一方で、円安が定着した後は価格競争力を強めた日本企業が輸出を増やしやすくなり貿易収支が改善(黒字拡大、赤字縮小)することが期待できる。

しかし、現実には財輸出はほとんど増加しておらず、通常の「Jカーブ効果」のメカニズムは働いていない。

他方、筆者が指摘している「悪いJカーブ効果」とは、国内生産能力や競争力が弱くて円安でも輸出は増えない一方で、「悪い円安」によって国内の需要が落ちることで輸入数量が減少し、貿易収支が改善していくという考え方である。

通常の「Jカーブ効果」でも貿易収支は改善することが予想されるが、「悪いJカーブ効果」でも貿易収支は改善し得る。貿易収支だけをみればいずれも「Jカーブ」なのだが、発現のパスが異なることが重要である。

2022〜2023年はどちらの「Jカーブ」か

ここで、現状までの「答え合わせ」として、2022年度(円安局面)と2023年度(円安後)のデータを確認する。

円安が進行していた2022年度は、輸入価格の上昇によって貿易収支(金額)が大幅に悪化した。また、2023年度は輸出数量が小幅マイナスとなり、通常の「Jカーブ効果」が生じなかったことがわかる。

他方、2023年度は輸入数量が前年度比マイナス6.1%となり、輸入金額は大幅に減少した。その結果、輸入の減少によって貿易収支が改善した格好であり、「悪いJカーブ効果」の動きで説明できる。

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