円安がこんなに続くのは「日本経済が縮んだ」から 貿易収支が改善したのは「悪いJカーブ効果」
東洋経済オンライン / 2024年7月18日 9時0分
まず、筆者の認識では「悪い円安」論は、何かそちらの方向に持っていきたい(リフレ派の好きな言葉で言えば、期待に働きかける)という目的で議論されてきたわけではない。
実際に消費マインドが大幅に悪化し、悪影響が目立った。そのうえで、製造業の生産拠点の状況などから円安による輸出の増加(Jカーブ効果)が出にくいことは、前述の議論の通り予想されたので、自然発生的に「悪い円安」論が出てきた。
それを批判するということは、各主体は現実を直視せずに都合のいいプロパガンダに徹すべきであるということであり、それは正しい姿ではないだろう。
5月21日に行われた日銀「多角的レビュー」のワークショップでは、東京大学名誉教授の吉川洋氏が「荒療治かもしれないが外科手術をすれば治るということで、手術した。一定の効果はあったが治らなかった。理由は『患者の体質が悪いから』。こういう説明は患者にアクセプト(容認)されるのだろうか」と述べたという(『日本経済新聞』)。
前述の「悪い円安」論への批判は、「円安になれば経済は良くなるはずだが、専門家・メディア・世論・政治・日銀が悪いから良くならない」と言っているようなものであり、アクセプトされるものではないだろう。
そもそも、リフレ派でなくても「悪い円安」論の議論の最後はたいてい「そうは言っても円安をテコに外需を取り込むべきである」という話になる。
円安のメリットは最大限活かすべきだという考えを否定する余地はないだろう。筆者も「骨太の方針2024」に企業の国内回帰を促す視点が少なかったことが残念だと指摘してきた。
実際には、円安をテコにした投資「期待」は生じていないわけではない。例えば、日銀短観の設備投資計画は堅調である。計画をしても実行されないことが問題なのである。
この背景については、設備投資のニーズはあっても人手不足問題などでなかなか実行されないという見方が多い。もっとも、機械受注統計は2022年と比べても下向きになっており、キャパシティーの問題だけでもないようである。
需要が増えなければ、設備投資は進まない
例えば、生成AIなど最新の技術を使った設備投資の計画が行われても、やってみたら実現は難しいことがわかったり、予算が余ったり、そもそも需要が増加して(必要性に対応して)設備投資をするわけではないので、先送りされやすいものが多かったりするのではないかと、筆者はみている。
企業利益が高まっても需要が増えなければ(設備稼働率が高まらなければ)設備投資は進まないということは、アベノミクスの円安局面の教訓でもある。
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