「定職に就けない」40歳男性が退職繰り返す"事情" 「仕事をしたい。社会とつながりたいんです」
東洋経済オンライン / 2024年7月19日 11時0分
しかし、実際に働いてみると、とにかく誤配が多かった。ダイゴさんは「月に2、3回はあったと思います」と認める。業務量が多く、夜10時ごろにバイクのライトを頼りに配達することも珍しくなかったというが、誤配は配達員にとって致命的なミスでもある。
そうした中、配達中に事故に遭ってしまう。同じ郵便局の車両から追突される、いわゆる「もらい事故」だったが、ダイゴさんはなぜかドライバーに「大丈夫です」と言い、そのまま仕事を続けてしまったという。
私が取材していた当時、郵政職場では事故を起こしても労災を申請させないばかりか、自腹で車両を修理させられた、人事評価を下げられたと話す職員にも出会った。ダイゴさんとしては誤配が多いことへの後ろめたさから、事故を報告することへのためらいもあった。しかし、適切な事故処理は労災申請のためにも必要なことだ。結局、ダイゴさんはこの事故が原因で肩を痛め、配達を続けることが難しくなったという。
その後、玩具の製造販売メーカーで働いたこともある。ここでは複数の上司から真逆の指示を出されるなどして、どちらに従っても理不尽に叱責されたことがストレスだったという。それぞれの上司に、指示を統一してほしいと言えば済む話なのでは? 私がそう指摘すると、ダイゴさんは「怖くて言えませんでした」とうなだれた。
また、自社製品の買い取りを強いられることもあった。ここでも自爆営業である。金額は多いときで10万円ほど。給与が手取りで15万円ほどだったダイゴさんにとっては死活問題だった。
一方でダイゴさんにはレジの打ち間違いなどのケアレスミスが多かった。また、接客態度についてクレームを受けることもあったという。正社員としての採用だったが、仕事や人間関係になじむことができず、1年ほどで辞めた。
まずは悪質企業をなくすことが先
ダイゴさんの話を聞いていて私が違和感を覚えたのは、交通事故の労災も自爆営業も、私が指摘するまで本人はさほど問題だと感じていないことだった。
労災については「そういう制度があることを知りませんでした」、自爆営業については「会社から指示されたので……。そういうものなのかなと思っていました」とダイゴさんは言った。
その後も日雇い派遣やアルバイト、障害者雇用でも働いたが、いずれも長続きしなかった。
持論になるが、障害のある人やひきこもり状態にある人への支援のゴールは、必ずしも就労である必要はないと考えている。働かざる者食うべからずともいわれるが、まずは悪質企業をなくすことが先だ。
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