メリットが多い?外国人「合宿免許に急増」のなぜ 外国籍の運転免許保有者数は10年で25%も増加
東洋経済オンライン / 2024年7月19日 11時30分
「私、反応が遅いから危ないかも。免許は取りますが……」
神奈川県では免許試験が20言語に対応
ちなみに教習所での仮免許試験、免許センターなどでの本免許試験とも、学科は多言語で受験できるようになりつつある。神奈川県ではこの6月末から、英語、中国語、ベトナム語、ポルトガル語、タイ語、ネパール語など20言語に対応を開始した。
その理由は運送業界の人手不足だ。公益社団法人・鉄道貨物協会によれば、バス、タクシー、トラックなどのドライバーは、2028年度には27.8万人が不足するという。そこを外国人で補おうという動きがいまから広がりつつある。この4月から在留資格「特定技能」に自動車運送業も追加され、本格的に外国人ドライバーが参入してくることになった。
「合宿免許でも、タクシーなど『2種』を目指そうという外国人が多いんです」(小峯さん)
また、ジップラスでは母国の運転免許を日本のものに切り替える手続きもサポートしている。その際にはもちろん日本の交通ルールを理解しているか、実技での確認も行われる。
日本人以上に安全運転の外国人ドライバーを育成することが役割でもあるジップラスだが、業務内容を反映してけっこうな多国籍チームなのである。
ベトナム、ネパール、中国、ノルウェー、ミャンマー……いろんな人たちが働いているのだが、お互いのやり取りは日本語というのが面白い。実はランさんとハンさんも同社のスタッフで、おもに合宿免許参加者への案内や手配などを行っている。
「自分も参加した経験があれば、お客さまにもちゃんとアドバイスができると思って」
と2人は話すが、彼女たちと合わせて8カ国34人が働く。日本人は14人だから、外国人のほうが多いのだ。その1人、ハンさんと机を並べるノルウェー人のルンド・ステファンさんは言う。
「いい意味で日本的じゃないところもある会社です。入ったばかりですが楽しくやってます」
ネパール人のスレスタ・イスさんは同社で働き始めて1年半ほど。
「いろんな人がいて楽しいですよ。ふだんは日本語、英語、ネパール語を使って仕事をしています。働きやすい職場ですね」
外国人のパワーを会社の活力に変える
みんな日本語が堪能とはいえ、文化が違うのだ。チームとしてまとめるのはなかなか苦労もありそうだが、そのあたりの事情について、合宿免許を取りまとめるマネージャー・大﨑奈々さんに聞いてみた。
「そうですね、大変です。みんないろんな考え方があるので、意見が食い違ったときにどこに落としどころを持ってくるか、とか」
それでも、やはり異なる文化を持った人が一緒に働くというのは刺激があるようだ。
「新しいことにチャレンジしていくって社風もいいと思っています」
もう1人、外国免許切り替えのリーダーを務める服部樹佳さんは言う。
「外国人スタッフが相手だからこうしている、とかは別にないんです。より多くの人が、国籍ではなく人として見てもらえる社会になればと思っています」
外国人のパワーを、会社の活力に変えていく。ジップラスのような企業は、これからどんどん増えてくるだろう。
室橋 裕和:ライター
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