海外の人が驚く「長時間保育大国」日本の実態 変わらなければいけないのは「親の働き方」
東洋経済オンライン / 2024年7月20日 19時0分
1990年代からの延長保育の普及促進策が効いていることがわかる。2023年度での実施率は94.3パーセント、平均分数は84.4分になった。
1時間延長が多数派ではあるが、2時間延長、4時間延長の園もあり、平均時間は1時間30分に近い。標準開所が18時30分までの園が1時間延長をすれば、19時30分までの保育になるので、やはり前述の国々に比べると開所時間が長い。
そして、このような長時間保育は、保育士のローテーションを間延びさせる。そのため、保育士自身の仕事と子育ての両立が難しくなり、妊娠を機に仕事をやめてしまう保育士は相当な割合に上っている。
それだけではない。いったんやめた保育士が再就職する場合も、ローテーション勤務がある正規雇用を避けて、パートでの勤務を希望する人が多くなっているという実態がある。
園長先生たちとのよもやま話で「正規雇用の職員は若い保育士ばかりで、パート職員がベテランばかりっていう逆転現象になっていて、いろいろ難しいことがある」という苦労話も聞いたことがある。
保育士が就労継続できない、あるいはしない理由はこれだけではないが、保育士が経験を積んで資質を向上させ、保育の質を上げていけるような労働条件になっていないとすれば、これは深刻な問題である。
図2は、「令和4年度東京都保育士実態調査結果」にある調査結果で、現在就業中の保育士の雇用形態をグラフ化している。調査対象は、2017年4月から2022年3月までの東京都保育士登録者(書換え登録等を含む)である。
東京都は独自の保育士給与改善を行っており、都内自治体の職員配置は都外自治体よりも恵まれている傾向にあるが、それでも継続就労が困難な実態が見て取れる。
子育て期に正規職を退職してしまう傾向は、実は女性の就業者全体の傾向と一致しているのだが、専門職である保育士のキャリア形成、専門性の向上、保育の質の向上を考えると、この実態では心もとない。
働き方改革の出遅れ
ここまで見てきたように、保育園・保育制度は時代の流れに合わせて変化してきた。保育制度改革は、女性が出産後も働き続けることができる社会への変化を助けてきたことは確かだ。
しかし、変わらなければならないのは、保育園だけではなかったはずだ。女性の「内助の功」を前提とした男性の「滅私奉公的な働き方」が標準とされた昭和の時代の痕跡は、いまだ根深く社会に残っている。
もちろん、ワーク・ライフ・バランスや過労死防止が言われるようになり、日本人の働き方も少しずつ変わってきた。2022年のOECD統計ベースでの年間平均労働時間ランキングでは、日本は1607時間、長い方から44カ国中30位とまずまずの順位になっている。
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