1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

道長は傍若無人?紫式部に見せた意外すぎる素顔 宮仕えを始めた式部、宮中での心に残る逸話

東洋経済オンライン / 2024年7月20日 9時30分

ちなみに、頼通が簾を上げて部屋に入ってくるときに、紫式部が語り合っていた宰相の君とは、藤原豊子のこと。道長の異母兄・藤原道綱の娘です。

宰相の君は、紫式部と同じく中宮・彰子に仕えており、これから産まれる彰子の子ども(敦成親王、後の後一条天皇)の乳母となる人物。宰相の君は上臈女房と呼ばれる、身分の高い女官でした。女房の身分は、上臈・中臈・下臈に分かれており、紫式部は中臈女房でした。宰相の君は、式部にとって、上司というべき存在だったとも言えるのでしょうか。

『紫式部日記』に記される式部と宰相の君との逸話はほかにもあります。

御前から局へ下がる途中、紫式部は宰相の君の戸口をそっとのぞいてみました。すると、宰相の君は、お昼寝の最中。萩や紫苑など色とりどりの衣を中に着て、つやつやの打ち衣を上に羽織り、硯の箱を枕に眠っています。

「小さくのぞいた額のあたりがとても可愛らしく若々しい。絵に描いたような立派なお姫様」。紫式部は宰相の君のお昼寝姿をそう評しています。

信頼関係があった宰相の君と紫式部

そのまま通り過ぎるかと思いきや、紫式部は、宰相の君の衣を引きのけ「物語の女君のような感じですね」とつぶやきます。当然、宰相の君は目を覚まして、顔を朱に染めつつ「ひどいですね。寝ている者を前触れもなく起こすなんて」と返します。

2人の間に、信頼関係があったからこその会話でしょう。宰相の君も、本気で怒ったわけではなさそうです。朱に染まる宰相の君の顔を見て、紫式部は「整って素敵でした」と書いています。案外、紫式部は宮仕えを楽しんでいたのではないでしょうか。

(主要参考・引用文献一覧)
・清水好子『紫式部』(岩波書店、1973)
・今井源衛『紫式部』(吉川弘文館、1985)
・朧谷寿『藤原道長』(ミネルヴァ書房、2007)
・紫式部著、山本淳子翻訳『紫式部日記』(角川学芸出版、2010)
・倉本一宏『紫式部と藤原道長』(講談社、2023)

濱田 浩一郎:歴史学者、作家、評論家

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください