今のアメリカは「ほぼトラ」ではなく「まじトラ」だ 「トランプトレード」で儲かる銘柄のヒントとは
東洋経済オンライン / 2024年7月20日 9時30分
ところが、2つの事件に挟まれた2番目の最高裁判断が、意外と重要な役割を果たしている。トランプ氏に迫っていた4つの刑事裁判の脅威が、急に遠のいたのである。
トランプ陣営はこれまで、「大統領には免責特権があるはずだ」との論陣を張っていた。任期中に行った仕事に対してあとから訴訟の対象になるかもしれないのでは大統領はやっていられない、というのである。しかるに大統領を特例扱いすることは、「法の前の平等」原則に外れ、いわば「人の上に人を作る」ことになる。当然、却下されるだろう、というのが事前の大方の読み筋であった。
しかるに7月1日に最高裁が下した判断は、大統領が公務としての行為には免責が及ぶ一方で、公務でない行為は訴訟の対象になるというものであった。そして大統領の行為が公務かそうでないかは、下級審が判断すべきとして審理を差し戻した。保守派の6人の判事が賛成し、リベラル派3人の判事が反対した結果で、絵に描いたような「保守派判決」ということになった。
これですっかり状況が変わった。4つの刑事裁判は現状、以下のとおりだ。
1. 口止め料事件:ニューヨーク地裁で5月30日に有罪判決が出て、7月11日にはマーチャン判事が量刑を言い渡すばかりになっていた。しかし今回の最高裁判決を受けて、有罪の根拠となった証拠の一部が使えないことになり、量刑言い渡しは9月まで延期されることが決定した。
2. 機密書類事件:トランプさんが大統領退任時に機密文書を持ち出し、自宅で保管していた疑惑については、フロリダ連邦地裁が「特別検察官を任命した司法省手続きが憲法違反だ」と判断して、7月15日に起訴棄却が決定した。
3. 連邦議会襲撃事件(1月6日事件):大統領選挙の結果を覆そうと、手続きを妨害した件で、トランプさんにとってはこれぞ大本命の裁判といえる。最高裁判決によって、「大統領の個々の行為が公務か否か」をワシントン連邦地裁が判断することになり、途方もない時間がかかりそうである。大統領選挙前の初公判はほぼ絶望的であり、タニヤ・チュトカン判事としては、苦しい判断を迫られそうだ。
4. ジョージア州事件:同州における大統領選挙結果を覆そうとして、トランプさんが州政府に圧力をかけたという問題。担当検事の不倫疑惑などが発覚したことで、裁判は当分始まりそうにないことが確実となっている。
このままだとアメリカは決定的に保守化する
トランプ氏を取り巻いていた司法問題という「霧」が、スーッと引いて行ったような感じである。いやもう、これだけの変化がほぼ半月の間に起きたのだから、「もしトラ」が「まじトラ」になるのも無理はないのである。
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