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奈良公園の「シカの糞」観察続けた60歳彼の半生 糞虫に魅せられ45年、退職金で博物館を設立

東洋経済オンライン / 2024年7月21日 12時30分

同時に、糞虫についてあれこれ綴る「むしむしブログ」をコツコツ更新して、「昆虫類」のブログランキングでTOP3入りを果たす。各地の昆虫好きからメールをもらったりと存在を知ってもらえるようになっていた。そうして準備を進めて2018年7月8日、ならまち糞虫館は開館。自身の退職金と借入金、奈良市からの補助金を合わせて総工費1000万円を投じて誕生した。中村さんの第二の人生がスタートした。

来館者の半数が迷ってしまう理由とは?

平日は別の仕事をしていることから、開館は土日の午後のみ。基本的には中村さん本人が在廊しており、糞虫について聞きたいことがあれば何でも教えてくれるアットホームな雰囲気も人気のポイントだ。

展示の仕方にも工夫が見られ、カラフルなカラーボールを用いることで、昆虫が苦手な人でも見やすくなっている。日本の糞虫は黒っぽい地味な色の種類が多いが、青、赤紫などのカラフルな種類も見られる。その中でも、瑠璃色を呈したルリセンチコガネは、中村さんがその美しさに魅了され糞虫にハマったきっかけでもあるので来館時には目に焼き付けておきたい。

国内のみならず、国外の糞虫も見られる。規則正しく整然と並べられ、米粒サイズの物からカブトムシほどの大きさの物まで。糞虫というとフンコロガシをイメージする人も多いかもしれないが、国内においていえば、糞虫の中でフンを転がすのはマメダルマコガネのみ。

そのまま見るだけでなく、虫眼鏡や顕微鏡も備わっており、肉眼ではわからない細部まで観察することも可能だ。

来館者の男女比は半々で、子連れのお客さんだけでなくアクティブシニア、そして近所の子供たちも訪れる。普段見ることがない種類の昆虫だけに、子供だけでなく大人たちも「うわー!」「ねー、見て見て!」っと驚きの声をあげる方も多い。

ただし、細い路地裏に位置していることもあり、来館者の半分ほどが迷ってしまうとのこと。

「奈良育ちの私にとって、路地に入っていくのには何の抵抗もないんですよ。だけど都会の方は『この路地は個人の敷地内だから入ったらいかん』と思われるようで、なかなかこっちに来られないみたいです。晴れている日は看板を出しているので、それを目印にしていただければ」

訪問の際は、事前に場所を調べておくのがおすすめだ。

素の自分で語れることのうれしさ

学者でもなければ研究者でもない。でも糞虫好きだった昆虫少年は、進学、就職を経た第二の人生で糞虫館を作るまでに至った。そのことがきっかけとなり、メディアに取り上げられたりいろんな人と出会ったり。そして生涯続くライフワークにもなり、中村さんの人生に彩りをもたらしている。

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