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秋田の無人駅で「"がっこ"爆売れ」感動の舞台裏 "漬物危機"に瀕したお母さんたち「3年間の奮闘記」

東洋経済オンライン / 2024年7月21日 13時0分

「お母さん」たちの進撃

今から3年前に改正食品衛生法が施行されたとき、大阿仁ワーキングは頭を抱えてしまった。2015年から1年に1回、豪雪の2月に開催している「がっこ市」が存続の危機に瀕したからである。

自家製の漬物を出品するがっこ市メンバーの“お母さん”たち――大阿仁ワーキングでは尊敬と親しみをこめてこう呼ぶーーも意気消沈。70~80代を中心にがっこ作り歴半世紀以上の大ベテランのお母さんたちは、口々につぶやいた。

「もう売られねば、がっこ市に出すのもやめねばなあ」

「んだな。年も年だし……」

少子高齢化が加速化し、若い世代の流出がとまらない大阿仁地区。人口は約800人。この20年でほぼ半分に減った。特別豪雪地帯に指定され、積雪3mにもなる。

10年前、長い冬場の一番寒い2月に『道の駅あに』で初めてがっこ市が開催された。大阿仁ワーキング事務局長の寺川重俊(70歳)さんは、お母さんたちが出品したがっこに驚いた。

「大根のビール漬けにしても、お母さんたちの味はすべて微妙に味が違うんです。そしてお客さんもまた自分好みの微妙な味を買い求めにきて、ちゃんとお目当てのものに出会っているんですね」

回数を重ねるごとにがっこ市は賑わいを増し、多いときは1000点以上のがっこが並ぶまでになった。法改正のために伝統の漬物文化やがっこ市の賑わいを絶やすのはもったいない。そこで共同加工所を作ることを決意した。

大阿仁ワーキングとお母さんたちは腹を決めた。改正食品衛生法の経過措置期間は3年間。場所探しと資金繰りが同時スタートした。

空き家を改修、公共施設を借りるなど試行錯誤の中、秋田内陸線にある無人駅・比立内駅の駅舎が空いていることがわかった。

駅舎はホームに出るために通過するだけ。運賃精算は車内のため券売機もない。かつてのテナントスペースは十分な広さがあり、国道沿いというロケーションも申し分ない。

「ここを借りよう!」。内陸線を運営する秋田内陸縦貫鉄道株式会社社長の吉田裕幸氏(61歳)に交渉に行くと、すぐに話が決まった。

「一も二もなく大賛成でした。内陸線は駅を地域の交流拠点にする取り組みを進めています。無人駅が伝統の食文化である漬物作りの拠点になって、地域の人たちが集う場ができる。非常にありがたかった」(吉田社長)

資金100万円余りが足りない…

2021年9月。無人駅の活用が決まった頃、当時、北秋田市の地域おこし協力隊だった斎藤美奈子さん(36歳。現・大阿仁ワーキング理事、合同会社アニーク代表)が参画。夢はさらに大きくなる。

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