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秋田の無人駅で「"がっこ"爆売れ」感動の舞台裏 "漬物危機"に瀕したお母さんたち「3年間の奮闘記」

東洋経済オンライン / 2024年7月21日 13時0分

改修費用の半分を補助したのは、秋田県農林水産部農山村振興課が担当する「未来へつなぐ元気な農山村創造事業」の補助金だった。2022年に創設したばかりの新しい制度で、地域特産物のブランド化や農山村発の新ビジネスを後押しすることを目的にする。

がっこステーションの補助金申請が認可されたのは、3つの点で高ポイントだったからだと、同課調整・地域活性化チームの青木隆行さん(44歳)は語る。

「1つが、長く続けてきたがっこ市を存続させ、次世代の漬物作りの担い手を育成し、がっこ文化を継承していくということ。

2つめは加工所では漬物だけでなく、大阿仁地区の名産・伏影りんごを使ったジャムや豊富な山菜の加工食品も製造、販売していくこと。

3つめは無人駅の内陸線比立内駅を活用すること。無人駅が地域資源として生まれ変わる。まさしくこの補助金事業が求めるところです。非常におもしろいと思いました」

共同加工所でがっこ作りをするようになって、それまで何十年も自宅で秘伝の味を守ってきたお母さんたちは、初めてがっこ市メンバー、つまり他人の作り方を見ることになる。皆、興味津々。味見をさせてもらえば、作り方を知りたくなる。

「がっこ市のメンバーはそれぞれ自分のレシピを持っていて、何冊もノートに書き込んでいます。作り方を教えてくれる人もいるし、“企業秘密”だからって教えない人もいます。私たちはなんでもありなんです」とメンバーの鈴木良子さん(67歳)はにっこり笑う。

確かに独立採算制のがっこ市ではメンバーといえど、商売ではライバル。出品する商品の値段づけも、メンバーがつける値段をちらちらと横目で見ながら決めるらしい。

あえて「減塩運動」に反した商品づくり

がっこステーションがオープンして、もっとがっこ市を盛り上げたい、たくさんの人に喜ばれるものを作りたいという思いは強まった。

良子さんはがっこ市に出品するようになってから、どんな漬物が好まれるかを考えるようになったと話す。

たとえば味噌漬け。今の味噌漬けの主流は塩分控えめ。これは脳卒中の死亡率が高い秋田県が40年以上に及び取り組んできた減塩運動の結果ともいえる。

しかし、がっこ市には「昔のビリッとした味つけの味噌漬け、ねが?(ないか?)」という年配のお客さんが少なからずいるという。良子さんはそういう人たちのために、減塩運動以前の秋田県独特の“ビリッとしょっぱい”味噌漬けを作りたいと考えている。少量多種もがっこステーションの強みだ。

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