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放置された「国民年金の給付水準低すぎる」大問題 就職氷河期世代が退職迎えると大変なことに

東洋経済オンライン / 2024年7月21日 11時0分

(写真:mits/PIXTA)

日本の公的年金制度において基礎年金の給付水準が低いことは、従来指摘されていた。今回の財政検証のオプション試算では、拠出期間の延長が効果があると示されたにもかかわらず、政府は、この改革を行わないことを決めた。就職氷河期世代の人たちがこれから退職期を迎えることを考えると、この決定は大きな問題だ。

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保険料納付期間延長案の見送りは問題

日本の公的年金制度は、退職後の生活のために十分な水準の給付をしているだろうか?また将来の見通しはどうか?

7月3日に公表された2024年財政検証の結果を見ると、厚生年金の場合には、5年後の所得代替率は、想定された4つのケースのどれでも、5割を回る。また高い成長率を仮定したケース1ケース2では、長期的に見ても、2120年まで5割を上回る(所得代替率とは、夫婦の年金額が、現役世代の男性の手取り収入の何%に当たるかを示すもの。政府は将来もこれが50%を下回らないようにすることを目標としている。2024年度の「所得代替率」は61.2%)。

このため、日本の公的年金制度は、安定的な給付を継続してくれるとの印象が広がっている。そして、政府は、懸案となっていた国民年金の保険料納付期間を延長する改正を、今回は見送る方針を決めた。

しかしこれは問題のある決定だ。財政検証の結果をよく見ると、年金の将来は、決して安心できるものではないからだ。

特に問題なのは、前述のように長期的に安定した給付が続けられるのは、厚生年金の場合であり、しかも、将来の経済成長について楽観的な見通しをした場合に限ったものであることだ。

国民年金の場合には、現在の給付水準も低いし、将来は、経済成長率のいかんによらず、それがさらに悪化すると予測されているのである。

基礎年金の給付水準が低い

この問題を議論するには、まず基礎年金と所得比例年金について説明しておく必要がある。

サラリーマンなどが加入する厚生年金保険においては、基礎年金拠出金を基礎年金勘定に繰り入れる。そして基礎年金と所得比例年金の両方を受給する。それに対して、自営業や農業、漁業などの従事者などが加入する国民年金保険では、基礎年金のみを受給する。

2024年度における基礎年金は、月額6万8000円だ(日本年金機構、令和6年4月分からの年金額等について)。

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