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放置された「国民年金の給付水準低すぎる」大問題 就職氷河期世代が退職迎えると大変なことに

東洋経済オンライン / 2024年7月21日 11時0分

もちろん、国庫負担分を増加するには、財源が必要だ。財源として増税を選べば、納税者の負担は増える。しかし、これは、納税者が全体として負担するものだ。国民年金の受給者の場合は、差し引きで利益を受けられる場合がずっと多いだろう。

なお、厚生年金の加入者の場合には、現行制度で65歳まで保険料を支払うので、これに加えて余分の負担が必要になるわけではない。他方で、基礎年金の受給額が増える。

看過できない年金の「未納問題」

国民年金保険料については、未納の問題もある。

国民年金の保険料を2年以上納めないままにしておくと、未納となる。年金額に反映されないだけでなく、受給資格期間にも算入されないので、老齢年金を受給できなくなる恐れがある。未納が続くと、最終的には差し押さえのリスクもある。

自営業やアルバイトなどの場合、経済的な理由で保険料を納めることが困難な人が未納になる可能性が高い。就職氷河期の人々には、未納者が多いと言われる。

それだけでなく、「もらう気がないから払わない」とか「どうせもらえないから払わない」という理由で払わない人もいると言われる。20〜30代の人の中には、「自分たちの世代は将来年金がもらえないと聞いた。だから、払う意味がない」と考えている人も少なくないという。

小泉内閣当時、17閣僚のうち、7閣僚に国民年金保険料の未納・未加入の時期があって問題となった。2023年1月にも、国会議員の年金未納問題がニュースとなった。 厚生労働省「令和3年度の国民年金の加入・保険料納付状況について」によると、2021年度の国民年金保険料の未納者は、106万人だ。国民年金の第1号被保険者に占める割合は約7.4%となっている。

厚生年金適用範囲の拡大

厚生年金の場合は保険料が給料から天引きされるので、未納になることはない。政府は厚生年金の適用範囲を広げる方針だ。

短時間労働者の厚生年金加入は、現在、従業員101人以上の企業に義務付けられている(2024年10月からは51人以上)。週の所定労働時間が20時間以上で、月額賃金8万8000円以上の労働者が対象となる。

5人以上のフルタイムの従業員がいる個人事業所についても、厚生年金の適用範囲を広げる。宿泊業や飲食サービス業など一部の業種は現在加入が義務付けられていないが、こうした「非適用業種」を解消する方向だ。

厚生労働省の試算では、撤廃により、新たに約130万人が加入できる。2024年末までに詳細な制度設計を検討し、2025年の通常国会に関連法案を提出する。

厚生年金の保険料は労使折半であり、加入拡大に伴って、企業の負担費用や事務作業が増える。このため、政府は負担軽減策を検討する。

野口 悠紀雄:一橋大学名誉教授

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