放置された「国民年金の給付水準低すぎる」大問題 就職氷河期世代が退職迎えると大変なことに
東洋経済オンライン / 2024年7月21日 11時0分
基礎年金の場合は、保険料も定額なので、経済成長率が高くなったところで、保険料収入が増えるわけではない。
財政検証の結果を見ても、保険料収入は、①「高成長実現ケース」と、②「成長型経済移行・継続ケース」で、2040年までほとんど同じだ。そして、基礎年金の所得代替率が、現在の36.2%からさらに下がることが予測されている。
就職氷河期においては、大企業に就職できず、非正規の就業を続けるといった人が多かった。こうした人たちは必ずしも厚生年金には加入していない。それらの人たちの多くは、これまでも十分な額の貯蓄を行っていないし、また退職金も期待できないと思われる。それに加えて公的年金に期待できないのでは、大きな問題だ。
そして、就職氷河期の人々が、これから退職後の時代を迎えることになる。したがってこれに対する措置は、差し迫った課題だ。
基礎年金の給付水準が低いことへの対策として、保険料の納付期間を、現行の40年(20~59歳)から、45年間(20~64歳)に延長する制度改革が提案されていた。
今回の財政検証では、納付期間延長に関するオプション試算が行われている。それによると、期間延長により基礎年金の所得代替率が上昇する。この効果は厚生年金の加入者に対しても及ぶ。具体的にはつぎのとおり。
基礎年金の拠出期間延長のオプション試算
基礎年金の拠出期間を延長した場合には、その分だけ給付が増額され、基礎年金が充実する。2024年度の基礎年金額(年81.6万円)をもとに計算すると、年約10万円の給付増となる。
「③過去30年投影ケース」のもとで、厚生年金の2055年の所得代替率は、57.3%と現状維持の場合の50.4%から6.9%ポイントだけ改善する。
ただし、保険料負担も国庫負担も増える。2024年度の国民年金保険料(月約1.7万円)をもとに計算すると、5年間で約100万円の負担増となる。また、国庫負担も増える。
国民年金の支給開始年齢の引き上げは、対象者に大きな利益をもたらす。
国民年金の加入者の場合には、前項のように保険料が100万円増加するのだが、それと引き換えに給付が増加する。20年間受給すれば保険料増加額の2倍だし、30年間受給すれば3倍だ。
もちろん、受給は将来のことだから割り引いて評価する必要があるが、これほど高い収益率を実現できる貯蓄手段は、他にはない。これは、基礎年金に対しては半分を国庫負担で賄う仕組みになっているからだ。
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