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乗客増えた?北総線「運賃大幅値下げ」のその後 経営トップが明かした戦略、狙いは当たったか

東洋経済オンライン / 2024年7月22日 7時0分

千葉ニュータウンの計画人口はもともと34万人だったが、用地買収の難航などで事業が停滞し、2024年3月時点でも人口はようやく10万人を超えた程度にすぎない。これが利用者の伸び悩みに直結しており、収支が赤字の期間が長引き累積損失も増え続けたのだ。想定より少ない収入を少しでも補うため、大きなものだけでも8回もの運賃値上げが行われた。

「運賃値下げ」どう決めたのか

京成電鉄の鉄道本部長を兼務していた室谷氏にしてみれば、北総鉄道では「心苦しいがどうしようもありません」と開き直ってやり過ごすという選択肢もあった。しかし、そうはしなかった。当時の利益水準から判断して、2022年度末には累積損失を解消できる見通しが立ったからだ。

「本来だったら2022年度に累積損失が解消するなら、それを見届けて2023年度から値下げの検討を始めてもよかったが、運賃値下げをやるなら早いほうがいい」

2022年度は北総鉄道の創立50周年に当たるということも「内心で意識していた」と言い、2018年頃から値下げの検討に着手した。

担当部署は企画室でスタッフは3人。「みなさんよく働いてくれました」と明るく語る室谷氏だが、自身も「1日30時間くらい働いている感じ。京成の本部長24時間、北総の社長6時間といったところでしょうか」と、すさまじい毎日だったと振り返る。

2020年に入って新型コロナウイルスの感染拡大により鉄道利用が大きく落ち込んだ。また、労働力不足、燃料高などによる費用増もあり、鉄道業界では運賃値上げの機運が高まっていた。しかし、値下げという室谷氏の考えが揺らぐことはなかった。

こうして、北総鉄道は2022年10月、運賃値下げに踏み切った。

「いくらのまでの減収なら会社として耐えられるか。何度も何度も値下げ後の収支のシミュレーションを繰り返し、目一杯インパクトのある値下げにしたいと考えた」

平均の運賃改定率はマイナス15.4%だが、一律の値下げではない。

「どこをどう値下げするかは戦略的に決めた」

一部の券種、一部の区界を重点的に値下げしている。まず、通学定期運賃を大幅に下げた。その値下げ率は64.7%。要するに3分の1にしたのだ。たとえば、京成高砂―印西牧の原間の1カ月定期は1万4990円から4990円、6カ月定期は8万950円から2万6950円。「首都圏の大手私鉄とほぼ同じ水準になった」。

普通運賃も値下げした。3kmまでの初乗り運賃は210円から190円という小幅の引き下げだが、10〜20kmという中距離帯は580円を475円に、643円を546円にといった具合に最大105円という比較的大きな値下げをしている。

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