乗客増えた?北総線「運賃大幅値下げ」のその後 経営トップが明かした戦略、狙いは当たったか
東洋経済オンライン / 2024年7月22日 7時0分
通学定期を3分の1に値下げしたのは、「沿線自治体の子育て施策とも呼応して、新しい人に移り住んでもらいたい」というまさに経営判断である。そして、普通運賃では中距離帯で比較的大きな値下げをしたのは、「北総線内の移動を促進したい」という狙いがある。
通学定期利用は3割増
では、値下げによる輸送人員や運輸収入への影響はどうだったのか。値下げ後1年間(2022年10月~2023年9月)の実績を元に室谷氏が説明してくれた。
まず、輸送人員について見ていくと、通学定期は2019年度に比べて約3割増という大幅な増加を示した。首都圏大手私鉄の平均は2019年度比で約1割減なので、運賃値下げの効果は明らかだという。15.4%の値下げは18億円の減収を意味するが、実際は4.5億円減で踏みとどまった。コロナ禍からの回復もあるが、さすが、思い切った値下げによる利用誘発効果があったということである。
「沿線の高校を訪問して話を聞くと、今までは運賃が高くて電車通学できず自転車で通学していた生徒さんたちが、電車通学に切り替えてくれるようになったということです。学校としても自転車通学よりも安全だということで喜んでもらっています」
都心の学校に向かう流動にも変化があった。
「千葉ニュータウンエリアの通学定期客における駅利用の変化を見ると、京成高砂の比重が増え、新鎌ヶ谷の比重が減っている。これは、運賃が高いため途中の新鎌ヶ谷で新京成線や東武アーバンパークラインに乗り換えて都心に出ていた学生や生徒の一部が、値下げの結果、経路を変更して京成高砂から京成線に乗り通してくれるようになったことを示しています」
普通券も値下げ前後で19.7%増えた。運賃区界別に見ると最も増えたのが12〜14kmという中距離帯の区間で30.0%増。この区間は値下げ幅が最も高く、値下げによって域内移動を促すという狙いがぴたり当たった。
「中距離帯の運賃を下げることで、千葉ニュータウンに住む人たちが、わざわざ都心まで出なくても、例えば大型のショッピングモールがある新鎌ヶ谷で買い物や食事をしようと考えてくれたようだ」
問題は収入である。値下げ後1年間の収入を前年同期と比較すると旅客運輸収入全体は106.4億円から101.9億円へと4.2%減った。値下げしたのだから当然といえば当然だが、運賃の平均値下げ率15.4%と比べれば、小幅にとどまっている。
「運輸収入を券種ごとに分析すると、普通券は利用者増による増収が値下げによる減収を上回り、トータルで1.8億円の増収になっている。これは明らかに値下げによって利用者が誘発されたことを意味している」
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