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苦手な「EBPM」に官僚が本腰を入れる真の狙い 「データで政策効果を検証」ができない政党政治

東洋経済オンライン / 2024年7月23日 9時0分

政策と効果の「因果関係」をデータで示せるか(写真:metamorworks / PIXTA)

7月19日に開催された経済財政諮問会議で、EBPM(証拠に基づく政策立案)の強化に向けてアクションプランを取りまとめるよう、岸田文雄首相は指示を出した。

同日の会議に提出された民間議員ペーパーによると、重要政策・計画ごとに収集データや検証方法、実効性あるEBPMの体制等を定める「EBPMアクションプラン」を本年内に策定する、としている。

EBPMの発端は「GDP推計の改善」

EBPMとは何か。

Evidence-Based Policy Makingの頭字語だが、それを解説した内閣府の説明文が興味深い。EBPMとは、政策の企画をその場限りのエピソードに頼るのではなく、政策目的を明確化したうえで合理的根拠(エビデンス)に基づくものとすること、である。

「エピソード・ベース」とは、たまたま見聞きした事例や経験(エピソード)のみに基づき政策を立案してしまい、これだけでは根拠や分析が不十分となる。これに対して、「エビデンス・ベース」は、変化が生じた要因についての事実関係をデータで収集し、どのような要因がその変化をもたらしたかをよく考え、データで検証して政策を立案するものであると位置づける。

日本において、EBPMが意味ある形で初めて政治の俎上に載ったのは、2016年12月に経済財政諮問会議で決定した「統計改革の基本方針」だった。

当時は、GDP(国内総生産)の推計が不安定だったことから、正確な景気判断のためにGDP統計を軸にした経済統計の改善を図ることと合わせて、EBPMの定着と推進を図ろうとするものだった。自民党内にも、この時期にEBPMに期待を寄せる議員が複数いた。

これを受けて、2017年1月に、内閣官房に統計改革推進室(2023年11月以降は同行政改革推進本部事務局に業務移管)を設置するとともに、菅義偉官房長官(当時)を議長とする統計改革推進会議が設けられ、EBPMのための体制構築などが議論された。そして、同年5月「最終取りまとめ」を公表した。

その中では、EBPMを推進する取り組みを総括する政策立案総括審議官などを各府省に設置し、その下で所管する行政に関してEBPMを進める体制整備を行うよう提言された。それに基づき、現在では各府省に政策立案総括審議官などのポストが設けられている。

こうして、EBPMは官邸主導で推進されるものと期待された。

「過ちを認めない」官僚の特性がEBPMを阻む

しかし、コロナ禍での政策立案では、それと逆行する動きさえあった。真にEBPMが推進されていれば、2020年度から2023年度まで10兆円単位の巨額の補正予算が組まれることはなかっただろう。そこでは、エビデンス・ベースというよりエピソード・ベースが跋扈した。

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