発表あるか?「熱中症特別警戒アラート」の危険性 もはや"災害級" 猛暑にどう対処すべきか
東洋経済オンライン / 2024年7月24日 14時0分
理由の1つとして、ある都道府県の“全て” の観測地点において暑さ指数(WBGT)が35に達する「特別警戒アラート」の基準は、ハードルが高いことを挙げる。
過去、その基準に最も近い状況になったのは埼玉県(2020年8月11日)だが、35を超えたのは同県内の8観測地点のうち2地点だった。
暑さ指数は、熱中症のリスクを判断するため、気温だけでなく「湿度」、日差しや地表面などからの「ふく射熱」を含めて算出される。本来は気温と同じように℃で表示されるべきだが、通常の気温との混同を避けるため、単位はつけられていないという。
突然発表されても不思議ではない
一方で岡氏は、これまでのトレンドから外れた高温も起こりうるため、「特別警戒アラート」が「ある日突然、発表されたとしても不思議ではない」とも語る。
2020年8月11日の埼玉県の最高気温を調べると以下の通りである。暑さ指数が35に達しなくても、人の体温をこえる危険な高温であることが分かる。
暑さ指数を構成する要素の中で、特に重要なのは湿球(しっきゅう)温度と呼ばれるもので、これは湿度の影響を考慮した気温を示す。
私たちの体は、暑いと汗をかいて水分を蒸発させることによって体温を下げている。しかし、湿度が高いと、この機能が正常に働かなくなるため、体がオーバーヒートして危険な状態に陥るリスクが高い。湿度の高い日本では特に、注意が必要だろう。
仮に「特別警戒アラート」が発表された場合、どのような状況になるのか。
岡氏は、予防行動が取られないと仮定すると、救急搬送数や死亡者数は、「指数関数的に増える可能性がある」と警告する。
また「特別警戒アラート」は広域を対象に出されるため、エリア全体で救急医療が逼迫する状況も想定されるという。
日本では高齢者を中心に熱中症による死者数が、2018年以降(除く2021年)、毎年1000人を超えている。この数は自然災害による死者を大幅に上回る(環境省)。高齢者や既往症がある人が被害を受けやすいという点では、コロナ禍と似ている。
熱中症の症状は、軽度の場合、めまいや筋肉の痙攣、中程度で吐き気や嘔吐、重度の場合は意識喪失や呼吸困難になり、死に至るケースもある。しかし田中内科クリニック(神奈川県大和市)の田中啓司院長は、「熱中症と診断するのは、実は勇気がいる」と話す。
田中院長は、まずは本人や家族から水分補給や具合が悪くなる前にいた場所を聞くほか、問診では舌や皮膚の渇き具合と血圧などをチェックする。
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