発表あるか?「熱中症特別警戒アラート」の危険性 もはや"災害級" 猛暑にどう対処すべきか
東洋経済オンライン / 2024年7月24日 14時0分
しかし、熱中症と似たような症状の患者が、実は「脳梗塞だった」こともあったという。また、熱中症から脳梗塞に進行するリスクを考え、大病院を紹介することもあるという。
過酷な夏をどのように生き抜くべきか
熱中症予防について岡氏は、「基本的にはエアコンの適切な使用と水分・塩分補給の2つを守れば防げる」と話し、「これが自然災害との大きな違いだ」と強調する。
さらに「特別警戒アラート」は前日の午後2時に発表されるため、翌日の屋外でのイベントなどを中止・変更するための時間的余裕はある。すでに暑さ指数を活用し、活動予定を判断している建設会社や教育機関もある。
ただ岡氏は、懸念材料として、エネルギーの供給面を挙げる。2019年に千葉県を中心に大きな被害をもたらした台風15号は、停電のため長期間エアコンが使えずに、8人が熱中症で亡くなった。
また国が今年3月に公表した電力需給の見通しによると、今夏の電力逼迫は回避できるはずだった。ところが7月上旬に東京都心の最高気温が36度を記録し電力需要が急増したため、東京電力管内は中部電力から電力融通を受けた。
国は電力の安定供給の確保に万全を期すとしているが、未曾有の猛暑が継続した場合、本当に大丈夫なのか、一抹の不安が残る。
全て個人の判断に任せるのは限界
気候変動への対応策は、「緩和策」と「適応策」の2つに分かれる。
「緩和策」は化石燃料を自然エネルギーに転換し温室効果ガスの削減を図ることなどがあり、「適応策」は洪水防止のインフラ整備、暑さに強い農作物の品種改良などがある。政府による「熱中症警戒アラート」などの情報提供も「適応策」の1つだと言える。
「適応策」が専門の岡氏は、この2つの策を「車の両輪」として推進する必要があるが、すでに顕在化している悪影響に対し「適応策」を講じることは「論を待たない」と語る。
一方、熱中症予防でエアコンの必要性をいくら説得しても、頑なに拒否する高齢者もいる。日本では国が、個人の自由な行動に制限を課すことはしないが、岡氏は健康被害に関わるため「個人の判断だけに任せておくことは限界がある」と指摘する。
そのうえで、一人暮らしの高齢者などに対しては、地域のコミュニティーが、情報技術なども駆使しながら、「見守り」や「声かけ」を一段と強化すべきだと語る。
人との接触を回避する必要性を強いられたコロナ禍を経て、他人や地域のつながりが希薄になった面は否めない。酷暑や熱中症との闘いは、「お節介」も含め、人とのつながりの重要性を見直す機会となるかが試されている。
伊藤 辰雄:ジャーナリスト
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