話題作なく総崩れ?「夏ドラマ」評価分かれる背景 クドカン新作と日曜劇場は厳しい評価の一方…
東洋経済オンライン / 2024年7月24日 12時0分
前期放送されたクドカン脚本の『季節のない街』(テレビ東京・ディズニープラス)は、災害から12年を経てなお仮設住宅で暮らす人々が抱えるさまざまな事情と街のあり方を、痛みを伴う喜劇として痛切に描き出していた。
本作にも痛みを持つ人々が登場する。彼らの人生の喪失からの癒やしと再生を、歌舞伎町という街を通してどう掘り下げていくのか。クドカン節の効いた悲喜こもごもの喜劇への昇華が、中盤から後半にかけて見られるのか。これからの展開を期待している。
日曜劇場っぽくない「ブラックペアン シーズン2」
日曜劇場は潮目が変わってきているように感じる。重厚感のある安定したストーリーが売りの枠だが、前作『アンチヒーロー』の暗く複雑だった物語とは対照的に、今回の『プラックペアン シーズン2』には医療ドラマであるにもかかわらず、ストーリーの“軽さ”が節々からにじんでいるように感じる。
人の命がかかるオペをショーと呼び、その公開オペのために症状が重篤で稀有な症例の患者を探す。そして、主人公の天才外科医・天城雪彦(二宮和也)の施術を受けて命が助かるためには、全財産の半分を彼との賭博にかけて、勝たなければならない。
こうした物語は、誰もの身近にある病気や命を扱うドラマとしての軽さに嫌悪感を抱く視聴者も少なくないのではないだろうか。たとえエンターテインメントとはわかっていても、それを楽しむ気持ちにはなりにくい。その結果が「日曜劇場っぽくない」「おもしろくない」という声につながっているように思う。
また、賭けがポイントになるはずなのに、その過程はほぼ描かれない。予定調和の手術成功後に、振り返りが少し入るだけ。第3話まででは手術はすべて行われており、天城の賭けの設定が、ドラマ前半ですでに意味を失いつつあるようにも感じる。
本作の出足の評価の鈍さは制作陣も感じていることだろう。これまでの日曜劇場らしくないのは、“新しさ”かもしれないが、視聴者が置いていかれている感がある。しかし、まだドラマははじまったばかり。これからの盛り返しを待ちたい。
キラキラではない月9「海のはじまり」
一方、スタートから視聴者を物語にぐいぐい引き込んでいるのが、フジテレビ月9ドラマ『海のはじまり』と『あの子の子ども』(関西テレビ・フジテレビ)の2本だ。
『海のはじまり』は、28歳の主人公・月岡夏(目黒蓮)が大学時代に付き合っていた同級生・南雲水季(古川琴音)の訃報とともに、彼女に娘がいて自身が父親であることを突然知る物語。
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