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話題作なく総崩れ?「夏ドラマ」評価分かれる背景 クドカン新作と日曜劇場は厳しい評価の一方…

東洋経済オンライン / 2024年7月24日 12時0分

自分の知らないところで自分の子どもが生まれ、何も知らないまま娘が7年間を生きてきたことに、夏は戸惑い、悩む。そこに向き合いながら、亡くなった母親がどのような思いで娘を育ててきたのかに加えて、現在付き合っている彼女の百瀬弥生(有村架純)の気持ちにも思いを馳せる。

突然彼の人生に訪れた大きな転機は、周囲の多くの人たちの人生に影響を与えていく。誰も悪くはないが、みんなが苦しみ、傷つく。ときにチクリと胸に刺さる痛みがあり、ときに心温まる優しさに満たされる。

「ラブストーリーの月9枠らしくない」「ストーリーが重すぎる」との声もあるが、近年の月9枠は若者のキラキラした恋愛ドラマだけの枠ではなくなっている。本作が切り込んだテーマは、親子の愛のあり方のひとつ。その愛を丁寧に優しくすくいあげるような描き方に、心を揺さぶられる。

一方で、『あの子の子ども』は、16歳の高校生カップルの女子生徒が妊娠してしまう物語。ふつうに部活も勉強もがんばり、恋愛も楽しんでいた一般的な高校生の2人が、その“1回きり”の出来事で苦しみ、悩むことになる。

たまたまコンドームが破れ、たまたまタイミングがあわず病院でアフターピルをもらい損ねる。そのことから目を背けるように生活していたなか、妊娠が発覚する。女子生徒は後悔し、傷つき、悩んで苦しむ。どこにでもいるような高校生2人が向き合う現実が切々と描かれる。

生まれゆく命を扱う良作

この2作に共通するのは、生まれゆく命を扱うテーマであることと、そこに向き合う現代の若者の素直な思いと真摯な姿勢が描かれていること。テレビドラマらしいドラマティックな演出はない。彼らの心の内が切々と丁寧に紡がれる。彼らの気持ちに嘘や作り物がなく、リアルだから心を打たれる。

2作品とも、誰の身の回りにあっても不思議ではないし、誰もが当事者であってもおかしくない。もし自分だったらと容易に想像できる物語であり、彼らの行動にも心情にもまるで自分ごとのように共感できる。

そこには、当事者へ優しく寄り添う姿勢と、彼らを見守る温かい視点がある。そのうえで、現代社会の一面をすくいあげる社会性とリアリティを兼ね備えた良作だ。

劇中の登場人物たちの人生が険しい道ではあることは承知のうえで、一緒に苦しみながら、これからの彼らの人生を見守っていきたいと思わせてくれる。そんな2作の行く末にも注目したい。

武井 保之:ライター

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